刹那の笑顔
刹那と遼誠
「でもね、
最近刹那に微かな変化が見られるようになったのよ。
少しだけ本当に少しだけだけど、笑っていた頃の面影が出てきたの。
あなたが、来てから少しね…
偶然かもしれないけれど
感情に変化が見られるようになったの。
だから、どんな子か気になって先生に手配してもらったという訳なの。
だから、先生少し挙動不審だったでしょう?クスクス。
ごめんなさいね。
利用した感じになってしまって」
母親は申し訳なさそうに言った。
遼誠は首を振り、1つ聞こうとしたら、
「なんで、泉山君がここにいるの?
お母様、これはどういうことなの?」
後ろから戸惑っているような刹那の声がした。
振り向くと刹那が身体を起こして、少しだけ驚いたように遼誠のことを見ていた。
「あー、わりぃな。
ちょっと、先生から頼まれたから……
勝手にお前の部屋上がって、悪かった。
」
遼誠は、頭を下げた。
すると、刹那は慌てて遼誠を制した。
「や、やめて。
そんな、謝るようなことはしてないでしょう?」
「うーん…、どうだろ?
実はさ…刹華のこと、聞いちまった。
ってか、お前の母親が教えてくれた。」
刹華という言葉を聞いた瞬間、刹那の顔つきが少し変わった。
「お母様、何を話したの?
部外者に、こんなことを話す必要はないわ。
勝手につまらない同情されるだけよ」
刹那は今までに見たことがないような暗く、鋭い視線を見せた。
遼誠は悲しそうな顔を伏せた。
「何を言ってるの!!
泉山君はあなたに宿題とかのプリントを持ってきてくださったのよ!
わざわざ遠いところ、持ってきてくれたのにもらって、はい、さようなら…なんてかわいそうでしょう?
そんなことより、持ってきてくれたお礼を言いなさい」
厳しい口調で言うお母様。
その途端、刹那は驚いた顔をした。