刹那の笑顔
遼誠は嬉しそうにニカッと笑って手を出す。

すると、刹那が困ったようにその手を見ている。


「これから、いろいろと迷子になるかもしれねぇしさ……手をつないじゃ

ダメ?」


「泉山君って……結構強引なのね…」


「遼誠!」


「あ、えっと……

遼誠?」


「なんで、疑問詞が付くの?」


「そういえば…
遼誠…の家って何か問題でもあったの?
初めて、このクラスに来た時、先生が意味深なことを言ってたから、少し不思議に思ったの」

「あー、それか…」


遼誠はそれっきり黙ってしまった。


「あ!言いたくないなら、いいの!
ごめんね?深く聞いたりしちゃって…。


手伝えるなら、何かした方がいいかな?って思って…。

家が、一応アレだから…」


「もう、大丈夫。
俺のことなんか、気にしなくていいよ!
心配してくれて、ありがとう。

いいから、今日は楽しもう!
後々、その話はするからさ!
ねっ? 」


遼誠は、明るくサラリと流した。

刹那はその顔に微かな動揺が見えたが
深く聞いたりしてほしくないのかな、と思いやめる。
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