僕らの恋に永遠の名を。
―翌朝。
『おーい、起きてー』
「あぁ…?」
なんだ、脳に声が…。
あ、そうか、久しぶりに幽霊が来たんだったか。
自分の体に2つの魂があるなんて不思議なもんだ。
『早く、あずん家に行こうよ』
「俺だって支度があんだよ…、ふぁ…」
端からみたら、俺は1人でしゃべってるだけだからな。変人すぎる。
まぁ、脳内で思ったことでも会話はできるけど。
催促する声を聞きながら、俺は洗面所へと向かった。
ピンポーン。
あれから1時間後の今、俺は葉月ん家の目の前にいる。
家と言っても、小さなアパートの一室だ。
もちろん、この場所は柊也(霊)に教えてもらった。
チャイムを鳴らすがなにも聞こえてこない。
「ふぁ…しかし、俺ん家から結構近いな」
チャリで20分かかるかかからないかぐらい。
『あず、遅いなぁ…』
なにこの噛み合わない会話。
ったく、どーせならもっとフレンドリーなのがよかったな。
『悪かったね』
「…めんどくせーな、」
霊が俺の体に潜伏できるのは基本的に3ヶ月が限界。
できるだけ早く抜けてもらわないと、俺自身が霊に乗っ取られてしまう。
「おせーな…。もう家でてんじゃねぇのか?」
『まだ寝てるんだよ』
しかし、ボロいアパートだな。
ここは二階で、手すりがあるけど、今にも壊れそうで寄りかかれやしない。
部屋数は8部屋か。
さ迷わせていた視線を再びドアの前にもってくる。
ピンポーン。
2度目のピンポン。
すると、今度は中でガタッというか、走る音が聞こえてきた。
ほどなくして、ドアがカチャリ、と開いた。
「どちらさまで…」
?!
びっくりして、思わず後退する。
…、寝てたんだな。
ドアを開けたのは、葉月本人だった。
普通にパジャマ姿の。
てっきり母親あたりがでてくるかと。
すると向こうも俺のことがわかったらしく、
半目だった目を思い切り開いた。
「ゆっっっ?!」
ばたん。
あ、閉められた。