僕らの恋に永遠の名を。

何度も顔を合わせる度に、仲良くなった。

「いえ…」
じゃあ、どーしよう。

「あ、」
あんまんにしよう。
匂いで食べたくなった。

私はレジに行って、ゆかりさんに注文した。
「あんまんひとつ」
「はいよー、最近また寒くなったわよねー」

若い子はいいわねー、と笑うゆかりさん。
の、脇から。

「母ちゃんー?俺もあんまん」
と、頭をわさわさ掻きながら出てきた男の人。

奥のドアから、出てきたみたい。

「金払いなさいよ」
ゆかりさんの息子かな、なんて、ちらっ、と顔を見たら。

「あっ!!」
思わず大きな声を出した私に驚くその人物。
「えっ!?」
「いや、な、なんでもないです……」

あんなカッコいい顔見間違うはずない。

寝起きなのか、ちょっと目が眠そうだけど。
ボサボサだけどカッコいいです。

彼の名前は、二階堂柚里。
ひとつ上の、先輩。
うちの学校なら知らない人はいないだろう、有名人。

実は、生で見たのは初めて。
「そういえば、梓ちゃんとバカは同じ高校かー」

ば、バカって…。
ん?ていうか。
この人、先輩のお母さん?!

「誰この子」
私の大声で完全に目が覚めたのか、パッチリ目で聞く先輩。

「梓ちゃん。あたしのお友だちよー♪」
「かわいそうに。こんなばばぁと友……っ」

先輩が"ば"の付く単語を発した瞬間、ゆかりさんが拳作って走り出した。
レジの中で。
本当にパワフルな人だ。

そして、その拳は、見事に先輩のお腹に命中。
「ちょっ、バカじゃないの?!吐くかと思ったゎ!」

「なんか言った?」
「…」
仲のいい親子だなぁ…。

ところで、私のあんまんはどこへ行ってしまったのか。
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