私はきっと運が悪い。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
「……」
「聞こえてるでしょ!安藤奏人!!」
「……」
廊下にあたしの声だけが響く。
なに、アイツ無視してる!?
「聞いてんの!?」
そう言ってあたしは安藤奏人の腕を掴んだ瞬間_
ちゅ
あたしと安藤奏人の唇が重なった。
……なにこれ。
「うるせぇよ、マジで。これでいい?」
「お前うっとおしいよ」
「さっさと失せろ」
そんなこと言ってまた歩き出す。
「……っ」
じわりと視界がにじむ。
……こんな奴の前でなんか泣きたくない。
のに涙はどんどん溢れてくる。
ファーストキスではないけれど、キスって大事なものだと思っていたからショックだった。
「は、お前泣いてんの?」
泣いているあたしに気づいて安藤奏人は近づいてくる。
「……んないで。」
「は?」
「触んないで!」
あたしは涙を拭おうとしたアイツの手を思いっきり振り払った。
「……ッ最低」
そう言い残して元来た道を走った。
迷うことなくあたしは屋上へ向かった。