俺とアイツといとこ殿!

サバイバル演習


俺たちは早く起きたあくる日あのサバイバル演習の話をしていた。

ある夏の日従兄弟23人が大広間に集められた。

既に大広間には目録と呼ばれるジジイとか
お目付と呼ばれるババアとかが座っており、沢山の本や道具・武器に至るまで置かれていた。

大広間は200疊を余裕で超すでかさだ。

寄り合いの時はそれでもいっぱいで人の芋洗いプールみたいになる。

その日はやけにシンと静かだった。

大人は10人ちょっとしかいなかったからだ。

戦闘系教育係の師匠が

「ひとつだけ選びなさい。これからお前たちは無人島で2週間すごすのだ。」

といった。
「無人島」という響きに俺は正直ワクワクした。夏休みって感じがしたし・・

毎日の決められた辛い修行より休めるような・・楽な気がしたし

冒険の匂いが男心をくすぐるってもんだ。

だけど一個だけってことは怪しい・・。

相当厳しいに違いない・・と思った俺は超デカイライターを取った。

その時も戦闘・騙し・なんでもありの取り合いだった。

弱いものは何もできない世界だった。

泣いたってどんどん惨めになるだけだ。
誰も慰めないし。

火があると何かと便利だぜ。と思った。
なんとなく。

力任せにライターをとった俺の競争率は
5人ってとこで余裕だったから

取り終わって正座して並んでいた。

ふとルカの方をみるとワイワイする従兄弟共とは違ってぼーっと立っていたように俺には見えた。

(早く選ばないと良いのがなくなっちゃうぜ)

正直トロイのかこいつとか思っていた。
今考えるとすごく考えていたのだと思う。

ルカは戦闘を好んでしない。
静かな女だった。

島の従兄弟の女の中でも群を抜いて力があることも特別扱いなのも綺麗な感じなのも

当時から明らかだったが俺ら綺麗な従姉弟は正直いっぱいいた。

似てるしななんだかんだで。
血が濃いんだ。

爺様の世代まで島の人間同士でしか結婚しない風習だったような事を聞いたことがある。

だから俺らは濃いと言うし思う。

爺様の代には子供にあたる俺らの両親のどっちかは15になったら本土(日本な)のあちこちに送られた。

俺のオヤジと母親は京都で出会って横浜に移り住んで住んでいたし

アイツもそんな感じだったと思う。

確か・・千葉あたりだったような。

ルカは大阪だと聞いていた。

でも・・流華のオヤジは俺のオヤジの5つ離れた弟なんだけどろくでもないと評判な力自慢のデブのヤツだった。

ルカには悪いけど暴力的だしそこらに女を作ってたって聞いてる。まあ島の男は好色で女やら浮気はしょっちゅう聞くけど・・逸脱してたな。噂話が。

だから流華の母親ってほんとの母親なのかどうか俺らは正確なところしらないんだ。

でもルカのオヤジじゃないけど島の人間って基本的に血の気が多いし気性も荒いすぐ怒るし大乱闘なんてザラだ。

爺様の葬式でも大合戦で。

遺産やら・・金でもめた。

とにかく欲が多い。

その時も沈黙していたルカに誰かがキレてルカのピタゴラスイッチを押し・・

全員守るしかなくなって・・流華が自分で収めるまで続いた。

ルカとはその頃あまり口を聞いたこともなかったから、ギャーギャー気の強い従姉弟の女とかのほうが話したことは多かった。

いつもちょっとした雑談とか文句垂れたり大した話はしないけど。

ルカは島の伝統的な武器の前で迷ってる様子だった。競争率はゼロだ。

皆鍛錬はそこそこしてるし武術も技もなんとなく生きていけるだろ位に思ってた。

結局組立できる鎖付きのヌンチャクに似ている前後に歯が付いた独特な剣を選んだ。
包丁+剣+ヌンチャクって感じ。


そんなの選んでどうすんだよって俺は思ったのを覚えてる。

「サバイバル演習」の意味を一番理解していたのは紛れも無く後で考えると・・ルカだった。

10才の時だからちょうど今寝ているルカの年の頃の夏だ。

5つ位の漁船で自分たちの島から数キロ離れた無人島に23人の従兄弟達は下ろされ

2・3時間かけてルールを聞いた。


サバイバル演習のルール

・2週間生き延びること
・病気や怪我等でどうしても無理だと思ったりしたときは白煙筒を打ち上げる事
・無人島の中に潜む刺客役に24時間狙われる事、撃退・逃亡・強力・捕虜なんでもあり。
・勝手に島に戻ってはいけない。2週間後に迎えに来る船に基本的には乗って帰ること。

もっていっていい物

・選んだ一品
・白円筒、ビニール袋が入ったリュック


質疑応答があったから長くなったが大したルールらしきものはこんなもので

なんでもありのいつ狙われるかわかったもんじゃないマジサバだった。

休み時間あるほうがマシじゃん。
げっそりとした俺を勇気づけたのはその当時で従兄弟が23人もいたことだった。

23人の中でも多少は仲良しとかそういうのもある。

親が仲がいいとかもあるし。

俺は最初徒党を組もうと言われてそれに乗って生活していたが後悔することになった。

狂い始めたのだ。

一人 また一人。

変になるやつも出てくる。

夏の暑い日に水もなし。

雨の日を願った。みんな。

狂いそうなやつに何度も白煙を打てと言ったがそれは親の恥になるからあるようでないルールだと叫ぶばかり。

確かに村八分にはされるだろうけど・・

食べるものがない。

赤石をこんな精神状態では作れない。

作ってやっても作ってくれたりしなかったりあとは未完成なものだったり。

子供ゆえのトラブルもしょっちゅうだった。

統制するリーダーがいないってそーゆーことだ。

だって自我の塊みたいな奴らが集まっているわけだし。

俺はライターで簡単に火を起こすことができたから煙で何処にいてもある程度安定したジャングル生活が整い始めても襲撃される。

それに雨の日はライターは使えない。

一日が毎日長く感じた。
24時間ってすんげえ長いんだよな。

「お前は最初どうだったの?」アイツに聞いてみた。

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