俺とアイツといとこ殿!

嵐を超えた珍客

ある日のことだ。

もう外出すら嫌がる寒さが来るこの島に珍客が海から来た。

本家に張り巡らされた鈴がなる。

俺の誕生日も近いっていうのに・・流華は家の中の島主の間と呼ばれる業務をする部屋にいたし

アイツはパトロールに出かけていた。

俺は何の気なしに玄関まで行ってみた。

すでに人が結構いた。

「何事である。」ちょっと流華っぽく言ってみた。バカってバレたらダメだって言うしな?

馬鹿って俺言われるほど馬鹿じゃないと思うんだけど・・・

「ああ。右翼様・・」ほ?漁師か。

「なに?どしたの?」やっぱ流華のマネは長く出来ないな?

「それがその・・・今日の漁を終わって帰ろうと思ったら浜辺の方に大きなゴミがあると思って帰るついでに捨てようと思って行ったのです・・・」

「ほー。感心だな。」

うん大きなゴミがあって見かけたから捨てようって愛国心じゃないけどイイコトだ。

「有難うございます。でもゴミじゃなかったんですよ。」

そう言うと乗ってきたのであろう車の方をちらっとみた。確かに大きいな・・ん???んんん??

軽トラックの荷台には猿轡をして海水でビチョビチョになった手足の縛られた16・7位?の女の子が毛布にくるまれて寝かされていた。

なんだ?こいつ。

今は緊急事態ということもあって見知らぬ人間は即捕縛し、排除するか本家に連行するようにお達しが流華から島民に言い渡されている。

「島の人間では無いことは確かなのですが・・・」

「そうだな。」

「今は気を失っているんですが連れてくるときに少しだけ話したんです。」

「なんて言ってたの?」

「なんでも自分は外国にいたとかなんだかんだと五月蝿いもので取りあえず当て身をしてよくわからないので本家に連れて来たんですが・・」

「あいわかった。」

≪流華?≫

≪なんだ?さっきの鈴か?≫

≪侵入者らしいんだが若い女だ・・どうしたらいい?漁師が連れてきた。≫

≪僕もすぐもどるね。≫

回線に割り込んでくるアイツはすぐ来るだろうな・・移動術式か?いいなあ。

≪取りあえず尋問の間に置いとくか?≫

≪直接まず見ておきたいので蒼月の間に純ちゃんが念のため連れて行ってくれるか?≫

≪わかった蒼月の間だな・・気を失ってるみたいだけど・なんかしてきたら?≫

≪殺さない程度に攻撃なり骨を折るなりして動けないよう対処したらいい。一段落したら行く。≫

ほんとに自分じゃなけりゃ いいんだね・・・。

「右翼様?」

漁師は不安そうな顔でこっちを見てるし島民もお役に付いてる人間もこっち見てる。

「すまんな。待たせた。島主に相談したらこちらで一旦預かるとのこと。ご苦労であった。引き渡せ。」

「じゃあ確かに引き渡しました」

女の子をポンと荷台からゴミみたいにすぐ下の地面に投げた。

おいおい・・乱暴だな。

「また何かあったら頼むな。」俺は笑顔でそう言った。

もちろん作り笑いだけど・・島民の協力なくしてパトロールも出来ないし。

それに結局アイツがパトロールに行っててもみつけたのはこのおっさんだしな。

用事が終わったと思ったら気が楽になったのか元気に軽トラのドアをしめて自分の家かなんかに戻っていった。

そのへんにいた家の者に

「蒼月の間に取りあえず通すように言われた。連れていってくれ俺も行く。島主もあとから見極めるために来るそうだ。」

「はい。分かりました。そのように。」

二人と俺は蒼月の間というこじんまり?って言っても30帖位ある部屋に向かった。

本家は部屋がいっぱいあるから名前がないとどこに連れてったのかとかわからない。

流華は馬に乗ったりするけど島の人間は車で端から端に移動しようと思ったらしてる。庭も玄関も相当デカイ。

俺が育った庭付き一戸建て建売住宅は40坪位の家に2階建てという大した広さがないので車で移動ってのは考えられないけど歩いたらやっぱつかれるから俺らは。

エネルギーが自分でないもの・・車やらなんかで移動する。

この子・・・なんなんだろう・・

蒼月の間について足と頭を持って運んでくれた家のものも去って俺と海水女がポツンと残った。

俺は皮のソファーで煙草を吸ってたし・・女の子は机を挟んで向かいのソファに置いてもらってるが

正直暇だ。なんてことはない普通の女に見える。色も視えるし、寝ている意識のない色だ。

確かに刺客の可能性は捨てきれないけど・・・だって普通の奴らは入って来れない。

まあ漁師がいう外国にいたというのはなんなんだろうか・・ココは一応日本の端っこだぞ。

「ん・・・」

起きた。

「んーーー・・んーー・・」
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