俺とアイツといとこ殿!
オスミって飲んだら変わるのね。こいつゼンキチっていうのか。

「いや、良い。その姉上はどのように居なくなったのだ。」

「ある月が赤い夜でございます。屋敷を巡回しておりましたら・・ズリ・・ズリ・・と音がするんでランプを持って当番だったわっしが音の方へ行ったんですが・・」

皆怪談話を聞くように集中してどこかしこに座り込み始めた。

「ふむ。・・何の音であろうな・・?」

「・・分かりませんが・・私は音から辿っていったんでさ。したら姉様のメグミお嬢の部屋が見えまして・・何か賊かと走っていったんです・・したらその不気味な男がメグミお嬢の部屋でわっしの方を刀を持って座っておりましてね。ギラギラした目でこっちを見て笑ったんでさ。」

ひょえーーー怖い。寒いのに余計寒い。オカンが走るっていうのかなあ

「その姉上か。女の姿は?」

「ありませんでした。刀から血が出てるでもなく・・お嬢を見つける方が先だと夜警に連絡しに戻りましたらその物の怪も居なくなっておりましたし夜警も2日かけて屋敷中や屋敷回り・・近所も確認したんですが争った形跡も無いのです。実際わっしも後で勿論探しましたが・・・」

戦わなかったのか。ふうん。腰抜けなのか?

「お前は命を取り留めたの。番頭として良い判断だ。
おらぬもので敵わぬかもしれんなら捕獲しようとせず夜警に連絡を入れることは大切なのだ。
夜警は主らの何倍も鍛錬しておるでな。
・・女が目の前にいたらまた別だが。
この娘も家の主も守らねばならぬ。
それより・・賊は賊として、女は勝手に出ていったという可能性は?」

そっか。この人は番頭っていう役所だから当主に連絡したり家のものを起こしたりこのオスミって子が無事がとかまで見なきゃいけないから不気味なやつがいて逃げたってよりは立場的に正しい行動なんだな。

みんなそう俺でも立場ってもんがあるし。俺なら・・どうしてる?

まず心配なのは姉上の方だけど 取りあえず見たことねえやつがそいつの部屋に夜中いるなら決め付けて見つけるのとテレパスしたり捕縛が多分俺の役割だ・・。

流華がいたら指示を聞いて守るか戦う。

報告と攻撃・・報告するには場の見極め。流華が最も重要だという正しいか正しくないかという見極め。

「お輿入れが実は決まっておりまして、良い縁談に恵まれメグミお嬢も大層毎日ご機嫌でした。
考えられません。」

まだ死んだとは信じてないんだろう。誘拐だって金持ちなら身代金の要求だってあるかもしんねえ。

俺だってわかんないし。そんなに悲しそうには話はとりあえずしてない。

「なるほどのう。お前のとこのお嬢さんはもう潰れたみたいゆえ・・まだまだ私と飲み比べるには早かったようだ。運んでゆけ。あとは伝えておきなさい。その物の怪お前の家にはもう現れぬであろうから、ゆっくりと相応しい相手・良い縁談を待てば良いと。右翼は渡さぬ。ともな。ははは」

見てみればノックダウンされたオトミとやらは4本開けて一升瓶を抱えてグースカ寝てた。

こうやってみると可愛いものだな。

「この度はとんだ無礼を致しました。この詫びはまた後日・・」

男は深々と頭を下げている。

そういう責任だって付いてくるんだろう。悪いと思ってるんだとは思うけどさ。

俺だって流華のことで謝った数って・・・・無いな。


「良い。酒の上の席である。私も了承したのだ。勿論手は抜いておらぬが。」

だろうよ!

流華は10本開けて普通に話している。

「有難う御座います。では・・失礼します。勘定はうちで持たせて頂きますので・・。」

「当たり前だ。城主が民から得た資産で飲み歩くほどうちは腐っておらぬ。団子くらいは食うがな。」

流華はにっこりと笑った。

それともうその運ばれた酒に手を付けず水筒のヒレ酒を飲み直している。

番頭はオトミをおんぶして勘定を払って帰っていった。

「流華?俺はもうかけないでくれよ?」

「心配したか?」

「いんや。してねえけど。あの子がゲロはくんじゃねえかと・・」

「ははは。そうだな。たしかに吐かれると何義だな。ムキになるのも怖れがあるゆえだ。許してやれ。」

「ん?」

「・・そんな悪臭がしてきそうな男の手にかかりとうないのは皆ここの女達も同じ。ましてや自分の屋敷で姉上がそうなったのだ。自分の相手くらいとやっきになってもしょうがない。しかしな・・」

流華は怖い顔で(っていうと失礼だけど)考え込む。

「どした?」

「純ちゃんの勘はほぼ決定したようなものだ。」

まじかよ。。

「でも気配がないんだぜ。」

「そうであるな。でも収穫はあった。少し気になることもある・・城に戻ろうか。そこの女子。帰るぞ。」

「またいらして下さいね。」「ああ。団子代は城に取りにくればよい。」

「かしこまりました?」

いつの間にか夜になってた。早いもんだな。

「馳走になったな。」店のものとお客さん?もみんなで

「有難うございました!!」と表まで送ってくれた。

なにやら流華は話しかけられて応えている。

トントンと肩を叩かれた。

「いやあ・・人格者で器量良し。酒も強いが喧嘩じゃ右に出るものがいねえ。
名将軍で殿様ときちゃ・・オトミも敵わんな!・・惚れてんだろ?あんちゃん。」

「ま・・まあな。」ルカに聞こえない程度にヒソヒソと話した。

町民Bの方が俺の気持ち分かってくれる!!

しかしよく知ってるんだな。

「あんな成りしてっけどちぃせえ頃は長屋で暮らしてるのを俺は見てたんだけどよ。変わらんわ?」

そゆことね?

「偉そうだったろ?」

「ああ偉そうだし偉いしよ。ふはは。俺っちも何かと言いつけられたがよ。
あんな気持ちのいい女知らねえ。細けえし、怒ると恐ろしいけどよ。」

「確かに恐ろしいなキレたら・・気持ちいい女ってなんだ?」

ヤッたりしてたのか?そんなまさかだぜ?

「言葉のとおりよっ。気持ちが清々しい気分になる女だろ?・・いっぺんの曇もねえ。
俺っちらの為により良い方法ってのをいつも考え込んで汚い爺さんと探してたぜ。
まあもう殿様とか長老だからよ昔の話いうと母ちゃんに怒られるがなぁ。」

「へえ・・」

気持ちの良い女ってそゆことか。良い女って流華が燕とかにいうのはそうゆう意味で使ってるのか。

「町の皆悪く言わねえよ。・・戦に負けた侍やら流れ者はたまに毒づくけどよ。
それもしょうがねぇ俺たちゃそいつらのタマ取ったり家族を奪ってんだからな。
・・だけどよあの人が必死こいて俺っちらの為に小さな身体で色々頑張ってるの見てたらそりゃ元気にやるしかねえってば。
あん人が覇者でも物の怪でも俺らはなんにも思わねえ。どんな着物着てても髪がなんでも中身はかわりゃしねえ。」

「はは・・そだな。ありがとよ。俺のいとこ殿なんだ」

信頼っていうのは一貫した迷わない流華に暴力的な女だけどちゃんとついてくる。どこでだってそうだ。

見てくれてる。・・目立つしな。

誰が見てないところでも間違ってるか合ってるか分からないような迷路だって進んでいるんだ。

「血?繋がってんのかい?見えねえな。そう言われてみれば・・似てるっちゃ・・似てるけどよ」

「うっせ!」

「純ちゃん何をしておるのだ。行くぞ?」

流華がこっちにきた。

「お前・・久しいな。元気そうだな。」

「覚えてくれてたんで?お嬢。元気も元気でぃ!」

ああ。そっか長屋暮らしの時は城主じゃなくてお嬢って呼ばれてたのか。

だからあの籠屋のホスト風もお嬢っていうんだ。

「ああ。そりゃあ覚えている。水汲み飯炊き風呂炊き・・酒を盗んだりしてお前がくれたろう?」

「こき使ってただけでし!殿様なっても相変わらずザルだなあよ?いい飲みっぷりでしたぜ?小娘相手にそんなにムキにならんくても?」

ぎゃははと笑い転げてるこのおっさんは酒盗んで流華に届けてたのか。

「はは。本気の相手に手を抜くなどできぬのだ。嫁とは仲良くやってるか?」

「母ちゃんには・・怒られてばっかで?い」

ああ母ちゃんって奥さんの事だったのか。

微妙に言葉のニュアンスが違うんだな。エッケなんとかの時アイツが言ってたのはこうゆう感じ?

「宜しく伝えておいてくれ。お前も守るのだぞ。その変な輩が来たら嫁を」

「任せときっ俺は天下分け目の戦でも戦った!母ちゃんは俺が守ってやらんと気ぃだけ強いからな」

「では早く帰るのだ。皆も今日は早々に帰るようにな。よくわからぬものを討ち取ったら知らせるゆえ。お前が町民には施錠をきちんとせよと行って回れよ。」

「またオイラかよっまあ任せときっやってやら。お嬢いつもありがとよ?じゃな兄ちゃん頑張れよ!」

男はズッデンズッデンと走っていった。

そこには温かい目で見ている町民がいた。見守っているという感じだ。

流華の言うことを聞きそうそうに散らばっていったけど・・

不思議だ・・・。

島では温かい目というより羨望や期待や失敗をしないか測りにかけられてるような感じばっかなのに・・。

ここじゃあ一緒にこの国を良くしてくれた長屋の口の汚ねえお嬢さんなんだな。

「皆も気を付けよ。」

「はい。」

俺らは城に帰って歩き始めた。

「なあ流華?」「ん?」

「こっちの方が・・」

「もう言うな。・・瞬ちゃんは島は・・どうなる。」

「・・・・だよな・・」
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