俺とアイツといとこ殿!
『そ、そうや。ワシらの土建屋と癒着してる企業とお前ら神咲で都外の地区をどっちが競り落すって時や』

「ああ覚えている。お前のしつこい工作もうざかったしなによりお前の娘は美しかったから。」

おっさんはすこし涙目になった。

『そうや・・ワシに似ぃひんべっぴんなよう出来すぎた娘や。』

このガマグチみたいなおっさんの娘が美しい?そんな馬鹿な。。

「あの時競り落としたのは神咲。私は正当に仕事をした。お前の娘に後日詫びにこられた。」

『カヨに?』

「ああ。妨害などを父がしたとの事で申しわけないときちんと謝ることができる凛とした女だった」

『き・・聞いてないで。。そんなこと。。』

「ああ。父には内緒にということであったからお前にわざわざ言う義理もないしな。」

『そらそうか。』何納得してんだよおっさん。

「では何故というのが残るだろう。」

『なんでや!!頼む教えてくれ。ノロはそんな話なんもゆえへんかった。』

ルカって女の声は人の心を惹きつける。

それは誰であっても・・・俺はすがるようにルカを見るおっさんを残念に思う。

「うちが権利を取ってからお前の娘は脅迫にあっていた。」

『誰にや!!!』

「お前と手を組んだ企業の下っ端だよ。」

『そんなん間に受けんでも・・』

「純粋な娘だ。・・間に受けた。それにお前のしたことも自分のしたことかのように詫びに来るほど優しい娘ではないか。」

『なんて脅されたんや。そこまではわからんか?』

「いやメールしてたから知っている。」メアド交換したのかよ・・。

『教えてくれ・・頼む・・この借りは一生かけて返すさかい・・』

「一生かけて返さなくていい。お前の娘は一生をかけてお前を守ったのだから。チャラだ。
だから私はお前に報復もなにもしなかったし、何も言わなかったお父さんには黙っていて欲しいという願いもあったからな。」

『カヨ・・なんでゆえへんかったんや・・・なんで』

机を何度もたたくおっさんが可哀想に思えた。どういう事情であれ娘を亡くしたんだ。

「最初に言った。お前が殺したと。お前はあの時言いたくても帰って来ない。女と飲み歩きたまに帰ってきても潰れている。そう書いていた。」

『・・・・・。そうやな・・あの時は・・でかい仕事が無くなってたまには羽を伸ばせると・・』

「それが娘にはショックで家で居場所がないセンチメンタルなオヤジに見えたわけだよ。」

『はあ?』

カヨって子天然だったの・・?言っちゃあ悪いけど・・。

「お前たちはどちらにせよすれ違いそのズレをコミュニケーションとして直せないところで物を考えていた。」

まあそうゆうことだな。

『・・・・・。』

「その矢先にその下っ端から最後のチャンスで父に仕事をやる今は信用の下落した会社なんだからと丸め込まれる上手い話があった。」

『・・・・・誰やそいつは。』

「知らない。お前の娘としかメールしていないし、私は行くなといった。」

『ゆうてくれたんか・・。』

「お前のためではない。糞豚。」

おいおい言い過ぎだろ。

「都内のホテルのロビーで待ち合わせをするというメールを貰った。」

『カヨが死んだホテル・・』

「ギリギリまで私たちはメールをしていた。」

『な・・じゃあなんでカヨの携帯の中身は消えてたんやっ!!!』

「それは私が消した。」

『お前が・・ぁ!!』おっさんは立ち上がってまた机をこんどは手のひらで叩いた。

おっさんの怒りがムキムキと湧き上がってくるのを感じた。

「頼まれた。」少し悲しい眼をしたルカは多分記憶を思い出しながら話している。

『カヨに・・・・』おっさんの怒りが急速に落ちてゆく。

「ああ。私たちはメールでやりとりをしていた。私も危ないと思い向っていたんだ。」

『うそやーそこまで非道なお前がするはずがないわっお前の噂もやり方も知っとんねん。』

早口にまくし立てるおっさんにルカは沈着な態度で話す。

何を知ってるって言うんだ・・?

「お前の娘は真摯に謝ってきた。私はその純粋さに免じて許したし私は相談を受けていた。身も心も美しい女が汚い男に騙され汚されるのを理解したので助けようとしておかしいか?」

『・・・・・・。』

おっさんの娘に罪はないもんな。俺だったらそこまで別もんには考えられねえけど・・。

「娘は人目があるところでする話じゃないし父の悪いことを誰が聞いているかわからないと部屋に上がった。なぜだと思う?」

『すべては・・・』

「お前のためにだ・・。」

『ワシの・・・。為に・・』

おっさんは涙でぐしゃぐしゃになった恥も外聞もなくデカイ大男がぼろぼろと涙を流す。

「そう思ったらまずはこんなにいい話をこぎつけて取ってきてやったのだから少しは気持ちで返して欲しいとシャワーを浴びるように言われた。そこで信じてた全てが嘘だったのかもしれない。でも本当だったとしても父の為に男に抱かれる女は父の娘失格だと自分を責めた。」

『・・・・・。』

「天然もそこまでいくとすげえな。」

俺はうっかり思ったことをポロっと言ってしまった。

おっさんがギラっとした眼で睨んだ。

「はたから聞くとそう思うという話だよ。でも私にはお前の娘のどこまでも澄んだ声がまだ頭に残っている。追い詰められた人間の真理など一つではないから例え判断が鈍ってもわかるはずもない。」

子供のころからお前はそれを知っているよな。

そういう弱さを許せるのが言葉や力の強さなんだろうな。

『・・・ワシもや・・残っとる・・子供の頃からええ子やった、こんなオヤジを尊敬してると中学の卒業アルバムにも書いてくれた。』

ウイスキーを新しいグラスに注いで氷をいれかき混ぜてルカに渡す。往年のライバルが仲直りしたかのような。・・・いややはり変な光景だ。

ルカは普通に受け取りロックで少しだけ飲むと。こういった。

「私は貴方の言葉をもっと素直に聞くべきだった。父に相談するべきだった。何もかもを携帯から削除するプレゼントをくれませんか?と変なメールが最後のメールだった。」

『プレ・・・ゼント?』

「ああ 全然違う話だけれどその娘の誕生日が近いのでなにか贈ろうかと尋ねたことがある。」

『カヨの・・誕生日・・そうや・・12月31日が誕生日で・・』

「そんな込み入った話まではしていないが、その時は保留にされたのだ。私が先にプレゼントをしますって申し訳なくて受け取れないってな。」

『そんな・・・』

「私が着いた頃にはもう飛び降りてたよ。純潔を守り、父の娘でありたいと思う少女はバスローブで死んでいた。」

『ワシが見たときは普通の・・服で・・・』

「血は服に付いていたか?私が失礼ながらせめて公衆に辱しめられぬように着せた。そして携帯の履歴も全て消した。部屋には男はもう居なかった。」

『血は・・・ついてなかった・・?か・・?』

現場写真なのかデスクの中をガサガサと漁る。

やはりすんごくこのおっさんも調べたりしてたわけだ。

「飛び降りたのになぜ服に血がついてなかったのか・・そんなことをお前はあの時考えれなかったろう。全てを内密にという約束の元、勝手に交わされた約束だが私は丁寧に着せ替えた。」

『・・・・』

写真をみながら涙を落とすおっさん。

死体の服をきせかえるの事態普通いやがるしお前服自分で着ないじゃんか。

手間取ったろうな・・とルカの身内だから俺はそう思う。

「なあお前。私の言った意味を理解したか?」

ルカは厳しい顔で言う。

『ワシがコロ・・した・・・・』

「お前がセコイ小細工に明け暮れていなければ、お前の娘は罪に気を病むこともなかった。酒に明け暮れていなければ相談することもできた。尊敬する父とやらに顔向けができないと変な方向まで突っ走ることはなかったのだ!!あの時!!私の言葉は伝わらなかった!!お前の言葉以外あの子を救えなかった!!!!」

ルカは大きな声で怒鳴りつけた。がすぐに落ち着いた。

「私は美しい女が好きだ。心まで美しい女はそうそういない。ましてやお前みたいな小者の汚い糞豚の娘があんなに純粋でなければ居合わせても着替えさせてもいない。」

『じゃあ・・ノロは・・ワシを騙したんか!!!!』


「いや、ノロが視たという現場の景色は私が娘の前に到着したあとの部分だろう。何も知らされず力関係や思い込みで判断するなら死者を着替えさせ携帯の履歴を削除している私は偽装しているようにも取れる。」

『騙したわけや・・・ない・・んか・・』

「まあノロと直接話したわけではないが・・・衣服やら遺品を持ってすがったのだろう?」

『そうや・・・なんで娘がホテルから死ななあかんのか・・本当のことがしりとおて・・』

「私たち島の世界では技術者にもよるが・・ノロの文化では一部しか見れないとキオクしている。なお一層視ることのできるノロは10年に一人か20年に1人生まれるか生まれないか位の確立だ。」

『こんなことって。。。』

「無いな。一番罰を受けるべき人間はきっかけを作ったお前とホテルで合ったその男だろう。」

力なく項垂れるおっさんは悲哀に満ちた眼でグラスの氷を眺めていた。

「だがお前が見てもらったノロは・・・」

思いもよらない言葉が出てくる。

「その数十年いや・・100年に一人かというノロだ。」
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