俺とアイツといとこ殿!
「わーったって。家に薬やら色々あるからなんとかなるぜ。ちょっと我慢な。」

俺は猫の頭をポンポンと撫でてやってエレベータからは走って部屋に向かった。

「雨・・ひどくなったな。あそこにいなくて正解だぜ。もう誰も通らないかもだし。」

「たしかにな。捨て猫ならまだしも血が出ていたら拾おうなんて馬鹿は少ないであろ~な?」

俺バカかよ?・・・・。

まあいいや。その馬鹿っぷりを反省してたとこだったし。

傷口を少し洗ってやって消毒液をかけた。

「痛いのじゃ痛いのじゃ!」

「うるせえわかってるけどしなけりゃなおんないの!」

添え木になりそうなてきとうなハンガーを折ったやつをつけてみた。

「痛いわ!!しみて・・痛いっての!!もっと優しくできんかの?」

猫が話すとこんなに五月蝿いもんなのか・・・。

「しょうがないだろ?ばい菌入ったら歩けないんだぜ?マシだろ?」

包帯と金具で固定してやった。本当に片方は折れて片方はヒビが入ってる状態だったんだ。

「・・・それは困るのーわしも帰らないと・・いけんし。」

「お前をこんな目に合わせた奴のとこにかよ?」

「・・・・それ以外どこにいけっちゅうんじゃ・・」

・・・・。そうだよな・・飼い主の元以外どこに行けばいいのかわからねえ。

俺もそうだもん。

流華の顔を思い出した。

お・・俺ってばペットじゃないけどよ?

アイツの下で働く以外にこの馬鹿力を発揮する場所も居場所も・・ない気がした。

「俺も・・・飼い主のとこ家出しちまってここになんとなく住んでるんだ・・」

なんで俺猫に身の上相談してるんだ?

「そうか・・・わしと一緒じゃの・・わしは捨てられたがの」

しんみりとした部屋に閉じ込めるように降る雨。

俺は捨てられるのが怖くて捨てたんじゃないのか?

「とりあえず怪我が治るまでいたら?メシくらい奢ってやんよ。」

俺は左翼として給料ってもんがずっと入ってたキャッシュカードがある。

親にもらったキャッシュカードもそのまんまだ。金には困ってない。

高校になってからは半端ない金が毎月入ってた。

しばらーーく困らないだろう。

猫の缶詰や自分の飯(スーパーかコンビニだけど)くらい平気だ。

「わし魚が食べたい。」

なんと生意気な・・・コンビニに売ってねえじゃねえか・・。

でも猫だし・・魚食いたいゆってもそうか。

「じゃあ今日はさ?我慢して?明日スーパーで・・」

「今食べたいのじゃ!!お腹がへったのじゃ」

うるせえなあ・・・

もういいや。24時間のスーパーで刺身でも買ってこよう。

「なんの魚を食いたいんだよ・・」

「一緒に行くぞ?!」

猫はにんまりしたように顔を洗う仕草をしてご機嫌レッツゴーだけど・・

痛くねえの?もう。痛み止めの軟膏は塗ったけど・・。

「あのなースーパーはペットは入れねえってば。」

「見えないから平気じゃよ」

え?今なんつった?お前。ヘンテコな事言わなかったか?

俺は聞いてないふりをして・・

「じゃあなんか刺身買ってくるから。」

カバンを拾って靴下をはきかえた。

「聞こえたじゃろー見えないのじゃー」

「やっぱり・・おまえオバケなのかよ?」

「違うわい。わしは・・」

猫が俯いても哀愁すら感じねえよ?


「精霊・・・」

「精霊だったのかよ!!」

「いや・・聞けぃ!!最後まで。」

「お・・おう」

俺は猫に諭された。

「精霊に・・なれなかったものじゃ・・」

「は?なんだそれ・・」

「精霊はしってるようじゃな。」

あの木蓮の時みたような・・やつだよな・・?

「まあ・・知ってるっちゃ知ってる・・」

「この地を守るいくつかの精霊をまとめる神社というのがある。」

「へー」

そんなのあるの?本社みたいな?

「わしは・・この町の精霊になるハズじゃった・・祈りと呼ばれる儀式の時に御霊を御神木から一旦外に預けるのじゃが・・」

「よくわかんねえな?」

「とにかくわしもよくわからんが儀式の最中に変な女が乗り込んで着て途中で御霊がこの猫に移ってしまったのじゃ。
わしは・・魚など食いとうないがこの猫の習性なのか・・食いたくなるのじゃ」

「食いたいんじゃんつまり。」

「むぅ・・おぬしが馬鹿じゃということはわかった。」

ネ・・ネコにまで・・・。

馬鹿にされた俺って・・凹む。
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