俺とアイツといとこ殿!
おっさんは少し考えたように見えたがすぐにピンと来たようだった。

『ああ・・・そうやった・・まだ若い頃・・出世したら庭にでっかい桜植えたるって言うたことがあるんや・・』

「お前の庭に墓はあるのだろう・・」

『桜・・そうやな・・あの頃に比べたらワシ・・出世したもんな・・植えたらなあかんかった・・』

「まあよくわからんが楽しみにしてたそうだ。」

ルカはグラスを置いて立ち上がった。

『ま・・まて・・』

「なんだ・・私の用はすんだ。帰るとするよ」

足音が聞こえる。数人だ。

「ルカ・・誰か来る。」

アイツが身構える。

「うむ。そうだな。」

ルカは身構えない。俺は身構えてみる。

ぶっ壊れてるドアの隙間から

「オーナー!!大丈夫ですか??」

「変な女とガキが来たらしいと・・!!」

その光景はちょっと無様な感じがする。

変に壊れてて開かないし穴は空いてるしだ。

倒れてる奴を見て誰か店の人間か会社の腕の立ちそうな人間が来ってとこだろう。

『じゃかましいわい!客人じゃボケ!戻っとけや!!』

そう怒鳴りつける。

「お前が一番やかましい。」

ルカにそう言われるとオーナー様もガタ落ちだ。

そりゃそうか。

それにいつあたりから客人になったんだろ。


『桜を植えることはできる・・けど・・今のワシは土建から遠のいてもうた。やり直すなんか虫のいい話・・あるわけない・・』

「虫のイイ話に乗らないか?」

ナヌ?こんなたぬきオヤジいつ寝返るか・・わからんぞ。

「東京ではないが、大阪に新しい線路ができてその界隈に小さな住宅街を作る計画がある。やるならお前に任せようと思うが。」

正気かァ???という顔をしてるおっさんと俺。

『なんでそこまです・・るんや・・・・』

「お前の娘は最後のお願いが多くて適わん。私はどうも美しい女にとことん弱いみたいでね。手を抜いたり汚いことをすればさすがに約束にはならぬので、すぐに切るがきちんと仕事をすれば請け負わせてやる。」


『いくら・・総帥ってゆわはっても・・今ここの一存で決めれるわけ・・』

「私は名前だけの総帥ではない。YESかNOかを聞いている。」

『も、もちろんオーイエスや。小さい仕事でもなんでも汚れた仕事でもワシ・・・ワシは・・』

オーイエスってなんだろう・・。
イエスのことか?大阪風ギャグなのか?


「出直したいんだろ。汚い仕事はするな。もうすでに醜悪な面なんだから。」

面と仕事を結びつけたぞ・・。

『はいっ!!お願いします。神咲さん。』

おっさんまともにやっと話すようになった・・・。

「純ちゃん電話を鞄から出して本社の大木に繋いで。」

カバンを持たされてたのを忘れてた俺は・・・おっとっと・・俺の出番はないと思ってたが・・

とよろけた。

が取りあえずアドレス張から本社にかけて・・と。

大木さんをお願いしますと繋いでスピーカーホン設定にした。

「純くん久しぶり~♪」
と陽気な声がした。

場の雰囲気が微妙になった。

ヤバイッス。

「あ・・はい久しぶりです~」

「今度飯に行こう?っていってからさぁ・・・」

ルカが割って入る。

「大木か。」

「ハ・・・総帥・・でいらっしゃいますか。」

縮こまった・・。

「ああ。大阪の住宅街の件で電話させたのだが・・建設会社を信用の置ける会社に決めた。資料に目を通しておくように。」

「ハッ。僭越ながら・・先ほど資料には目を通させて頂きました。」

「そうか。よろしい。問題無いな。」

「我が社は信用が第一 総帥は唯一でございます。」

「うむ。以降は捺印の後大阪支社に回せ。」

「ハッ了解致しました。」

ルカは首をプイとおっさんの方に戻した。
もういいってことだろう。

「大木さん。じゃあまた食事は今度って事で。」

俺はスピーカーをオフにする。

「ああ。純君総帥と居るならゆってくれないと~ヤバイよ~」

「大木さんは暫く首は飛ばないと思うけど?」

「違うよ~俺緊張して噛みそうになっちゃった★わーでも久しぶりに話せた~」

子供のような人だ・・けど仕事はできるし人望もある。

「てことで切るよ忙しいから。」

「うんうんじゃあまたね~」

俺にはフレンドリーな東京本社の社長は・・やっぱりルカのファンなのか・・。

アイツはちょっとへばっててマジで力を使ったみたいでフラッフラしてた。

「明日にでも連絡はさせるようにいってある。」

おっさんはパクパク金魚みたいにして、うまい話を食らってる。


『絶対にへまはせんで・・・ワシ・・カヨが安心していけるように・・頑張るさかいに・・』

「そう気負うな。確かに殺したのはお前だと最初に言ったが最後に決断したのは本人だ。しかしな、その状況を作った共犯やら元凶はまだ年端もいかぬ子供をほったらかしにしていたお前の責任でもあることを自覚してほしかっただけだ。
娘の寂しさや思いを少しも理解せぬままではカヨが可哀想だと思ったのだ。
まだ悲しみから抜け出すことも、いきなり始めることも難しいだろうが真面目にやることは悪いことではない。
心は常に少しずつでも前に進むことが大事なことで、それがおまえの娘の願いでもある。正しい道をきちんとこなす結果の先に見えてくるものもあるだろう。・・精進するように。」

『ハイ・・。すまへんでした。そうします。』

将軍みたいだな・・。

ルカが少しだけ安堵したみたいな顔で微笑むように笑ったような気がした。

「行こうか。」

俺らの肩をポンと叩いてあのドアを勢い良く蹴り飛ばしてカツカツカツカツ歩いていく。

さすがいとこ殿。カッケー。

『名前だけじゃ人はついてこんわな・・あんなでかい会社ならもっとや・・とんだジャジャ馬か鬼神やとおもてたけど・・大したお方や・・・』


「だろ?」
「でしょ。」

俺たちは自慢げに言ってルカの後を追いかけた。

何故か帰りにチャリを漕ぐ俺は・・行きもそうだったんだけど

帰りに後ろに乗ってるのはアイツで・・嫌な気分・・。

原チャリを乗ってるのはルカで・・。

髪がキラキラしてボーッとしてぶつかりそうになった。

「ちゃんと前見て運転してよ。」
免許って原チャリ東京でもいるよな?

アイツもルカも島でコンバインを乗る如く普っ通?に乗ってるけど・・いいの?


「あんましくっつくなって・・・ヘロヘロ糞ビジュが・・・!!マジキモイ」

「僕だってくっつきたくないさ。だけどくっつかないと転ぶじゃないか体力馬鹿。」

悪態を付き合いながら・・
俺たちの公務?は無事?完遂したのだった。

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