俺とアイツといとこ殿!
燕が涙を(これはほんと泣きだ。)片手で抑えて膝まづいた。

流華が儀として自分の指を噛み血を出して燕の額に拇印を押すみたいに押し付ける。

これがひとつの恩賞の証になる。

「光栄で御座います。」

「あうんの呼吸。これがなければ成立しなかった。お前がいて助かった。有難う燕。」

島主ではなく流華としてお礼をいった。

そして煙草を吸い終わったのか砂?みたいな灰皿に押しつけドアの方へ歩いていった。

「何をしている。行くぞ。」

「は。」俺たちも燕を置いてついて行った。

「なあ流華〜」

長い廊下は中庭が見えるけど桜がもう蕾をつけている。

「蔵に行くのだ。」

「何をしに?」

「貰いっぱなしでは神咲として恥だ。なにかエッケハルディンに贈るのだ。」

なるほどー。

「決めてるの?」アイツが聞く。

「いや迷っている。こちらとして大事なものは贈れないし他から貰ったものも歴史を覆すようなものもダメだ・・神咲として持っているもので貴重なものでなければ・・」

「一ノ蔵に翡翠で出来たチェスがあったよね。あれは曽祖父様の趣味だったっけ?」

「そうだな・・あれなら神咲のものでなおかつあんな城など山のように買えるくらいの貴重な石だ。友好の証として贈ろう。」

移動術で一ノ蔵に家の中から行った。俺は今あいつより移動術が遅い。

葵の時は俺のが早かったのに・・

なにくそー負けるもんか。

ハァハァ・・

ついた・・

「そのように焦らなくても蔵は逃げぬ。ははは」

流華は俺らの小競り合いを見ていつものように自然に笑った。

天使には見えないけど俺こっちのほうが断然好きだ。

しかしでかいな一ノ蔵・・ド━(゜Д゜)━ ン !!!ってかんじ。鬼瓦も怖いし。

監視カメラだってある。(これは流華がつけたらしい。)

蔵前で立っているとさっきの書記が来た。

皆ここでは流華の気を追うとどこだって行ける。

「お待たせしたようで・・」

普通に車で来たのにな。

「別にいい。当主の名の元に翡翠のチェスをエッケハルディン家へ友好の証とし、贈与する。」

「は。かしこまりました。後で検分させて頂きます。」

「うむ。瞬ちゃん取ってきて。」

「うん」アイツ場所わかるんだろうか・・。

俺も入ってみよっと。

と思ったら書記が俺を手で抑止した。

「右翼様失礼ながら・・当主が許したもののみ入ることになっております。」

「わかったよ。」

ちぇー

タマを無でとこ。俺。

「あとこの赤いルビーと翡翠の指輪をエッケハルディンから贈り物として貰い受けた。用があるゆえまだ蔵には入れぬが記しておけ。貰ったのは昨日の夜ドイツ時間で12時前。」

「は。承知致しました。」

それは言うのね。

「あったよー」埃まみれのアイツが大きな箱を持ってきた。

「瞬ちゃんと純ちゃんでチェスの駒が足りてるか盤に欠けがないか見てくれないか。」

「はい」

まー 人にやるもんだもんな〜。俺らは燕が遅れて来たけど持ってきてくれたクロスで丁寧に拭きながら数える。

俺チェスって知らないんだけど・・。

とりあえず拭く係りしようっと。

キレーな石だな〜。

傷一つないや。曽祖父って爺さんの爺さんだろ?大事に使ってたんだな。きっと。

「でも流華〜爺様の爺様のものやっちゃっていいのか?」

「それは私のものである。」

「へ?」

「そうです。これは島主のものでございます。藏を開けた時点で譲渡されるのですから。右翼様」

燕がそんなことも知らないわけ?って顔で丁寧に話した。

くっそーーー糞生意気な女だな!!

「そうだよな。うん。聞いてみただけ〜」

頭では知っててもなんだか不思議なんだ。

エッケハルディンの昔の城主が昔の親友にあげたものが流華のものだと流華は言うけど・・

そしてエッケもそれを許してたから俺も納得したけど・・

なんだか不思議なんだよなあ・・

「流華駒は揃ってるしかけてないけど・・・」

アイツが数えてカケまで確かめたのかピッカピカになったチェスセットを持ってきた。

「けどなんだ?」

「箱がどうも古くて・・。ほんのすこしだけど盤上にキズもある。当たり前なんだけどさ。・・箱はそれに虫食いで渡せるものではないかなって」

「うむ・・・燕。防腐剤を持ってまいれ。腐るほどだ。貯蔵庫にある。」

今更かよ。てか貯蔵庫の中身とか蔵に何が入ってるのかまで記憶してるのか?

いや・・してないといけないのか?当主って。

「はい♪」

「今から開けた藏までには防腐剤を入れる。記録しておけ。」

書記にそう伝える。

「かしこまりました。」

そんなことまで覚えとかなきゃいけないの〜

何月何日当主が蔵に腐るほど防腐剤を入れました。みたいな。

大変だな〜

「開けてない蔵には入れないのか?」

「開けてない蔵を開ける権限が無いゆえ開けれないゆえ入れれない。」

ほー・・・そりゃそうか〜

「箱は・・?」

「箱は神咲が今手に入る最高の翡翠の品で入れ物を作らせよ。デザインは任せるが名入れも忘れずな。今の品を少し磨きにかけて細かい傷を無くしそれをエッケハルディンに送りなさい。」

「わかった。」

アイツがそう言ってどっかに走っていった。

きちんとものを贈るってそういうもんなんだなあ・・

「燕・・紙と筆を。」

「はい。どうぞ。」

持ってるのかよー。お前はどらいもんか。

サラサラと燕が筆のインクを持って流華が書いている。すげえやっぱ字がキタネエ。

「これを綺麗に清書して同封するように。先に違う正式な紙にサインをする。持ってるか?」

「はい。どうぞ。」

持ってるんか!!!頭がいいのか用意がいいのか・・

家が違えば絶対こいつが羽のどっちかだろうなあ・・・

流華は神咲しか使わない専用の封書と紙にサインをした。やっぱキタネエけど。

「では私清書して左翼様に渡して参りますので。失礼します防腐剤は順側女が持ってまいります。」

「うむ。書記も防腐剤の事柄がすんだら藏を閉じて下がってよい。私たちも部屋へ戻る。」

「は。かしこまりました。」
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