俺とアイツといとこ殿!
「言いたくなかったんじゃないの?」
アイツは笑いながら飯を食う。
「うん・・まあできれば。だけど・・」
ルカは珍しく少し濁した。どしたんだ?
「そんな姿にされちゃったしねえ・・。技は後退してるの?その姿ってことは」
へ?見えてるんだな!幼女だよな。ってかそか。幼女ではなく後退・・と言うべきか。
まま、待て。幼女というから変態チックなのか。なんていうんだ。・。
「してない。」
今度ははっきりという。してねえのかよ!してたら・・俺は責任問題なんだけどさ。
ルカも食べながら平然とアイツと話している。
「ええ?体が逆行してるってことは・・10か11位の技術レベルで・・」
俺は同じような疑問をもったので割って入った。
「私は・・8の時には技術・体術は島の人間から習うものの大体だが・・ほぼ覚えた。十分に今日の公務もこなせれる。」
「そ・・そういえばそうだったような・・俺らが遅いだけ?」
「んなわけあるか。ルカは特別なんだよ!」
アイツがムキになる。
知ってるけどさ。そんなに差があると・・・思わなかったし
「じゃあ何で一人で行ってたオツトメを連れて行く気になったの?見た目の説明?」
あ。オカズと共に美味しいとこをもっていかれた
「ナカマ・・だから。私の羽は・・お前たちだから・・」
少しだけ赤みの差した頬を見ると思い出す。恥ずかしいのかポツリという。
俺の行った言葉やっぱり聞いてたんだ。なんか嬉しい。
「それはすごく辛いことなの?」アイツは聞く。
「わからない」
「血まみれになって帰ってきてるのにかよ!」
声を荒らげてしまう。
「人を直接近くで殺せば血は出る。殺さなければ私が死ぬ。私は怪我をしていない・・」
「そ、そりゃあそうだけどよ。」まったく会話にならない。
俺は納得できないままだった。殺すとか・・・・・何言ってんだよ。
≪あんまり突っ込まないでよ困ってしまうじゃん。流華が。≫
≪なんでだよ嫌なことは嫌だって言うべきだし血まみれでよくわからないって変だろ。≫
テレパスのやり取りが始まる。
≪ルカは感情を消す訓練を受けてるんだ。とっくの昔に≫
≪ハァ?≫
≪知らないんだね。僕は見てたよ≫
≪何をだよ≫
≪感情が死ぬまでのルカとその後のルカだよ≫
≪今も笑ったりするじゃねえか≫
≪ああ。だから一回感情を殺されて自分で作って殺せるようになる訓練なんだよ≫
≪なんだそりゃ≫
≪もう。わかんないなら送るよ。隠し事は無しにしようぜ・・だったよネ・・≫
その後の俺を襲った悪夢は一生忘れない。
暗闇・毒・醜悪・嘘・罰・辱しめ・死・悲しみ・別れ・崩壊・
一気に頭の中にキオクのデータを送り付けられる。
生家でのルカの修行は・・吐きそうになるほどえげつないものだった。俺は実際吐きかけた。
そのえげつない修行の後・・傷だらけの体を隠しブカブカの服に着替えさせてもらって
俺たちと数時間寝てまた通常の地獄の鍛錬にひたすらに向かうルカと見守る?アイツの視界。
なんだかんだ笑ったり甘えてる俺の姿も見える。
どっか覚えるのが楽しいとかも思ってたあの頃。
・・絶望した。頭の中の景色に絶句した。
「あ・・ああ・・・・ああああああぁぁ」
「どうした純ちゃん?」
「心配ないよ」
アイツは自然と溢れ出る涙も恐怖で震える足も嗚咽の入った感情も視て分からないような
ガードをかけて俺をルカに見せないようにした。
「瞬ちゃん純ちゃんを・・いじめてるの?」
ルカはキっとアイツをにらむ。
「まさか。」
「解いてもいいんだよ。その盾・・意地悪やめて。」
幼いルカもきつい目で睨むと迫力は変わらない。
「わかったわかった。ごめーん。ちょっといじめてた。もうしませんー」
悪びれずにルカに謝ったところで頭に延々と送られてくるモノが止まった。
「ル・・カ・・なんで?・・・逃げなか・・た・・」
「ん?なんだって?」
ルカには言えない。
俺は悲しみから逃れられず 恐ろしさから闇に飲み込まれそうになっていた。
「なんでもないよ。男の話」
事もあろうに小便と大のほうを一緒に漏らしてるような状態で・・。
「純ちゃん・・大丈夫か?お風呂はいろう。瞬ちゃんも。」
ルカは手をつないで風呂場に連れて行ってくれた。
「男と入る趣味はないのに・・わかったよ。」
ため息をつきながらアイツは俺にもルカにも平然としていた。
・・アイツは知っていたんだ。ルカの苦しみも痛みも。
なんであんなことしなくちゃいけなかったんだ・・よ・・。
俺は・・俺を含むほとんどの奴は知らない。大人も子供もだ。
アイツは知っていて左翼になったのか・・・・。
ルカのために・・?
(我の内なる聖獣よ聞いているか見ているか)
(ああ見ているとも聞いているとも 私はお前と常に共にある)
(俺はもっと強くなりたい誰にもルカをもう傷つけさせたくない)
(強さとはなんなのだ 何をもって強さと呼ぶ)
(わからない・・・)
(では考えよ。そして示せ。何をもって形を成すのか主が迷うなら私も迷うなにも渡せない)
(わかった・・)
ぬめっとした感情もジーンズもろもろも取りあえずゴミ箱と一緒にポイだ。後で考えよう。
ゴミ袋に入れて袋を縛る。トイレのビデで洗い・・
風呂場へ向かう。高校生にもなって3人で風呂に入る俺ら。
流華は風呂で裸なのに恥ずかしさすら全くない。
きっと言えば風呂で裸なのは当たり前だろう。って
返されるんだろうなあ・・。男の前でって話なんだけどさ。
今日は一人すっかり幼女になってしまったが。
「ルカ10才バージョンも可愛いね~?」
「そうか。まあ・・少し小さい分軽いな身体が。」
「へえ~そうなんだ~。」
とろんとした声とジェットバスのボボボボボという音が聞こえる。
「ああ。だが多分走る速さとかは筋力と・・背が減った分だけは劣るだろうな。・・あ純ちゃん。」
「チ」
舌打ちかよ。お邪魔様ですな。アイツとルカのラブラブお風呂タイムなんか許すか!
「ルカ・・お前は俺らをもっと頼っていいんだからよ」
やっと出た言葉がこんなショボイ言葉だった。
「ああ。有難う。」
「仲間だもんね♪」
ルカの頬にプニと人差し指をツンツンしてアイツが締める。
コクコクっとルカが頷いた。
あ。またもや美味しいところをもっていかれた。クソ・・
ルカは天窓の開いた空を見て「ここは星が少ししか見えないな。」といった。
「そりゃあ都会だもんよ。」俺も上をみてみたが紺色の東京の空は夜なのに明るかった。
「あの無人島でみた星は美しかったな。三人で寝てた。目の中が星と空で一杯になった。」
「そうだね。」「だな」
思い出したくもないあのサバイバル演習・・。
真っ暗・真っ黒な空と血の臭いと恐怖の色。
そして綺麗な野生の猛獣みたいな流華。
ルカとアイツと俺が仲が良くなったあの島での生活。
そのあと何度も三人で寝て一緒に星を見た時の事を言ってるんだろう。
トリオになってた。
ルカは違うところにいつもいたけど
俺たちの誰を蹴落とそうともせずだけど甘やかさない。
従兄弟23人の中のすでに唯一で、目標だった。
ルカの髪をアイツが器用に洗う。俺もできるけどな!
・・薔薇のデザインが書いてある香水みたいな瓶のボトルに入った薔薇の香りのブランド?
というのか?まあ流華が気に入ってから最近ずっとこれだ。まあ俺も好きな香りだ。
ルカは生まれてこの方自分の事をあまりしない。
身繕いなどにおいて特にだけどな。歩いたりは勿論するが(あんまり歩かないけど)
なんていうのか・・歯まで磨かない。いや磨く必要がなかった。
俺らが来るまで側女(そばめ)という役所の女がいたし
最上階は流華の部屋しかないのに全部買い取ってるし敷地やマンションごと
神咲のものだから誰も住んでないし・・
住んでるとしたら妖精さんだ・・
側女も最上階の反対側の端っこ・・その中のひと部屋に住んで
流華の部屋に通って来ていた。
もう島に帰ったけど。
まあ身の回りの誰でもできること・・
それよりは一秒でも多くのことを考えればよい
という島や上役の意思だ。
それに流華自体そっち系に興味がないみたいだ。
ほおって置いたらいつまでも何もしやしない。
気持ち悪いなとか汗かいたりして誰も周りに居なかったら・・。
きっとその辺の川とか海に飛び込んで水浴びしそうな女だ。
変人っていうよりは・・無頓着というべきか?
身の回りの最低限のことも人として必要だろ・・?
俺はそんな島の意思って間違ってると思うんだけどな。