桜の木に恋の花咲く
恋のおまじない
「はぁ……」
少女が一人、木の下に立っていた。
思いつめたような表情で、幹に触れながら溜め息をついている。
木は桜の木。春先のこの木は枝にふくらみかけたつぼみをつけていた。
「先輩……やっぱり好きな人いたんだ」
明日世界が終わるかのような絶望感が、彼女の心中を占めていた。
また一つ大きな溜め息をつくと、彼女は木の幹に両手をつき……そっと唇を寄せた。
「こんなの、ただの気休めだろうけど……」
幹に対する少し長めの口付けを終えて、彼女は小さく呟いた。
この木が立っているのは、とある田舎の高校の校庭。
その高校で噂されているおまじないの話、それは、「校庭の片隅にある推定樹齢五百年の桜の木に口付けをしながら願うと、片思いが実る」というものだった。
だが、少女にはわかっていた。彼女の片思いの相手には、他に思う女性がいる。
それなのに、桜の木に口付けをした程度で、それがくつがえるわけもない。
またも大きな溜め息をついて、彼女が木から手を離したときだった。
一陣の突風が彼女のストレートの長い髪を吹き上げた。
思わず彼女は目を閉じ、左腕で顔をかばった。
風が止んで、恐る恐る彼女が目を開けると、そこにはあったはずの桜の木がなくなっていて、入れ替わったかのように、一人の美少年がそこに立っていた。
「やあ! キミが僕を目覚めさせてくれたんだね」
少女が一人、木の下に立っていた。
思いつめたような表情で、幹に触れながら溜め息をついている。
木は桜の木。春先のこの木は枝にふくらみかけたつぼみをつけていた。
「先輩……やっぱり好きな人いたんだ」
明日世界が終わるかのような絶望感が、彼女の心中を占めていた。
また一つ大きな溜め息をつくと、彼女は木の幹に両手をつき……そっと唇を寄せた。
「こんなの、ただの気休めだろうけど……」
幹に対する少し長めの口付けを終えて、彼女は小さく呟いた。
この木が立っているのは、とある田舎の高校の校庭。
その高校で噂されているおまじないの話、それは、「校庭の片隅にある推定樹齢五百年の桜の木に口付けをしながら願うと、片思いが実る」というものだった。
だが、少女にはわかっていた。彼女の片思いの相手には、他に思う女性がいる。
それなのに、桜の木に口付けをした程度で、それがくつがえるわけもない。
またも大きな溜め息をついて、彼女が木から手を離したときだった。
一陣の突風が彼女のストレートの長い髪を吹き上げた。
思わず彼女は目を閉じ、左腕で顔をかばった。
風が止んで、恐る恐る彼女が目を開けると、そこにはあったはずの桜の木がなくなっていて、入れ替わったかのように、一人の美少年がそこに立っていた。
「やあ! キミが僕を目覚めさせてくれたんだね」
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