桜の木に恋の花咲く
「さくら」
「でも、早く教えて欲しいな。今までいろんな女の子の恋を応援してきたけど、好きな相手のこと教えてくれなかったのはキミが初めてだよ」
「え? ほ、本当に恋を叶えてくれるの?」

 少女は少年をまじまじと見た。
 白い肌に、茶色い瞳。真っ黒な髪はギリギリ長髪とまでは言えないほどの長さだ。
 彼が笑顔を浮かべるたび、白い肌はほんのり桜色に染まる。

「叶えるよ。それが僕の趣味だからね」
「しゅ、趣味なの……」

 不思議な少年だが、彼に願えば本当に恋を叶えてくれそうな気がしてきていた。
 しかし……。

「やっぱり、いい。忘れて」

 彼女の言葉に、少年は驚いて訊き返す。

「え? どうして? 恋を叶えたくないの?」

 少女はうつむいたまま、小さい、しかしはっきりした声で言った。

「先輩が他の人を好きなら、私は割り込む気、ない。先輩の気持ちを無理矢理変えるなんてこと、したくない」
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