桜の木に恋の花咲く
 やはり少年は楽しげだ。逆に困っているのは少女の方だ。
 なんだかよくわからないが、少年が自分を気に入ったことで、桜の木が元に戻らない? 
 それではみんながきっと困るだろう。
 
 ……困る? みんなが? 具体的には誰が? 

「ねえ、キミの名前教えてよ。なんていうの?」

 無邪気にはしゃぐ少年に、罪悪感は感じられない。
 良いのだろうか? 桜の木が一本消えるなんて、大問題に発展しそうだと少女は感じたのだが。

「さくら……です」

 それでも、正直に少女は答えた。
 偶然にも木と同じ花の名前。あまりにできすぎた偶然。

「さくら。良い名前だね。僕も桜だしね。じゃあ僕の名前は……」

 少年は嬉しそうに彼女の名前を呼んだ。そして……。
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