ひつじがいっぴき。
「……ん……」
ここはどこだろう?
少しぼやけた視界には天井の離れたところに通気口がふたつ見える。
時折冷たい風が半分ひらいた窓から入ってきて、白いカーテンがゆらゆらと揺れている……。
視界がいつもより見えにくかったから、わたしは今、メガネをかけていないんだって思った。
メガネはどこにいったのだろう。
目をすぼめて探していると、カーテンよりも少し前にある小さな棚の上に、見慣れた黒縁メガネを発見した。
すぐさま手を伸ばし、メガネをかける。
そうしてカーテンと同じ白色をした壁にかかっている時計を見れば、時刻はお昼の2時を指していた。
どうやらわたしは少しの間、気を失っていたらしい。
お昼休み、倒れたことをなんとなく記憶しているから、そう思った。
それにわたしはふかふかのベッドで仰向けになっている。
白で統一されたこの部屋はどこなのかも知っている。
1階にある、職員室の隣の保健室だ。
「あ、気がついた?」
――え?
それはふいにわたしの耳に飛び込んできた。
おかげで心臓がドクンと跳ねてしまう。
わたしがびっくりしたのは、保健室にいるのはわたしひとりだと思っていたからだ。
まさか自分に声をかけられるなんて思わなかった。
――っていうのともうひとつ。
わたしの救世主であるアラタさんの声が聞こえたんだ。
驚かない方がおかしい。