ひつじがいっぴき。
わたしは勢いに任せて布団を跳ねのけ、上体を起こす。
そんなわたしの隣には、井上先生が細い眉をハの字にしてパイプ椅子に座っていた。
「保健の先生は睡眠不足だって言っていたよ。
急に目の前で倒れたから驚いた。
眠れないほどの、何か悩みがあるのかな? いや、言えないんだったらいいんだ。無理にとは言わない。
ただ、君と俺の年齢はそこまで離れているってわけじゃないだろう? 何か役に立てればって思ったんだ」
やっぱり迷惑かな……。
井上先生はそう言うと、眉間にしわを寄せて心配そうにわたしを見つめていた。
迷惑だなんてとんでもない。
だって、わたしがココにいるっていうことは、きっと気絶しているわたしを先生が抱えて保健室まで運んでくれたっていうことでしょう?
それに、わたしの目が覚めるまでずっと側にいてくれたっていうことだろうから……。
そう思うと、心配をかけてしまってものすごく後ろめたい気持ちになる反面、気にかけてくれて嬉しいとも感じる。
だって、わたしはかなりの人見知りで、小学校や中学校なんかでも今まで何度も教育実習生はやって来たけれど、その人たちとしゃべったことなんてない。
当然、相手もわたしのことなんて気にかけることもなかったと思うし、『わたし』っていう人物がいたことも実習生の人たちの記憶に残っていないと思う。
だけど井上先生は違った。