ひつじがいっぴき。

突然倒れたっていうのもあるんだろうけど、彼はわたしを心配してくれている。


そのことがとても嬉しい。


だからわたしは、他人にはめったに言わない自分のことと、最近わたしの身の回りで起こった出来事――『アラタ』さんについて井上先生に話しはじめる。


ほぼ面識のない人にこんなことを言うのはおかしいって自分でも思う。

だけどわたしにとって『アラタ』さんは救世主で、そんなアラタさんの声にそっくりな井上先生なんだもん。


言ってみようかなって思うのもムリもないよね。


「わたし、昔から熟睡できない体質なんです。

でも、日に日に睡眠時間が減ってきてて、今は2時間ごとに目が覚めて……。


そんな感じで夜は寝たり起きたりを繰り返すようになってたんです。

たぶん、原因はわたしの『考えすぎ』にあるじゃないかなって思うんですけど……でもこれはどうにもできなくって……。

『考えすぎ』っていうのは――……。


わたし、人と話すことが苦手で、コミュニケーションがうまくできないんです。

他人の目ばかり気になって、ちょっとしたことなんですけど、たとえば、月曜の朝礼の時、朝から人をかき分けて並ぶのがいやだなぁとか。


自分の出席番号と同じ数字の日が来たら授業で当てられる回数も増えるし、当てられた時にどんな質問が来るんだろうとか。

質問に答えられなかったら、みんなに馬鹿にされるんじゃないかとか。


――そんなことが頭の中でぐるぐる回ってしまうんです」


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