ひつじがいっぴき。
寝返りをうったことで肌の熱に触れていないシーツの一部分は少し冷えていて気持ちがいいとは思うけれど、やっぱり眠気はやって来ない。
わたしは中山 海莉(ナカヤマ カイリ)。
青空学園高校に通う1年生。
家族は父さんと母さん、わたしを入れて3人。
父さんと母さんは共働きをしているけれど、それはみんなの家でもしていること。
お父さんとお母さんの仲は、喧嘩をしているところは見たことがないし、ふたりが休みの日はよく一緒にいるからいい方だと思う。
わたしの成績は悪くもないし良くもない。
そんなわたしのトレードマークは、大きめの黒縁メガネに肩まである黒髪を三つ編みにして左右に結んでいる髪型。
どう見たって今どきの高校生っていう感じじゃない。
顔は……眠れなくなってからちょっと肌の色が青白っぽくなったかもしれない。
少しだけ大きい目の下には、そこまでじゃないけれどクマがある。
一昨日前、かな。
数少ない友達に目の下にクマがあることを指摘されてしまった。
だけど眠れなくなるほど大きな悩みを抱えているわけでもない。
あるとすれば、意味もなく眠れなくなってしまうこの神経質な自分。
――あと、ちょっと人と話すのが苦手で、人ごみも苦手。
友達と呼べる相手はひとりしかいない。
引っ込み思案。
それでもイジメられてはないから、学校生活もそこそこうまくやっていると思う。