ひつじがいっぴき。
それどころか、今まで以上にずっと眠れない日が続いてしまっていた……。
夜、また眠れなくなってしまったことは先生には言ってない。
だって、言ったらきっと眠れない理由を訊かれる。
そうしたら、わたしはこの想いを井上先生に告げなければいけなくなる。
だから言えない。
それに、先生はとても忙しい。
教育実習もあるけれど、大学の課題とかもあると思う。
好きな人もいるし……。
その女性をデートに誘ったりとかしなきゃだし……。
だからわたしのことを考えているヒマなんてこれっぽっちもない。
わたしから眠れなくなったことを言わなければ井上先生には気づかれることもない。
少なくとも、わたしはそう思っていた。
――でも、それは間違いだった。
わたしは、先生がものすごく優しくて、ものすごく親切だったのを、すっかり忘れてしまっていたんだ。