ひつじがいっぴき。
スピーカーから流れてきた音楽はとてもゆったりしている。
ジャズ……かな?
サックスとピアノの音がスピーカーから流れはじめた。
『リスナーのみなさん、ミュージックランの時間です。
先週から休みに入ってしまったパーソナリティーの代わりで今日も臨時パーソナリティーを務めさせていただきますアラタです。よろしく~』
ちょうど今始まったばかりみたいだ。
響きがいいステレオの音源と一緒に20代くらいの若い男の人の声がした。
『夜はだいぶん過ごしやすくなりました。
秋の夜長はまだはじまったばかり。
今日もしっとり楽しくいきましょう』
パーソナリティーの声の調子は明るいのに、どうしてかな。
バックに流れているジャズと同じですごくしっとりしていて、とても落ち着くの……。
わたしはさっきの焦りも忘れて静かに布団にもぐり込んだ。
そうしたら……。
あれ?
あれれ?
まぶたが……少しずつ……落ちていく……。
その夜、わたしはFMをつけたままうつ伏せになって意識を手放した。
――――――…………。
――――――――…………。
遠くから誰かの話し声が聞こえる。
それに、心地いい小鳥の鳴き声も。
少しずつ意識が覚醒してきたわたしは閉じていた目を開けた。
ふと横を見れば、しめきっているカーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。
外はとても明るかった。