ひつじがいっぴき。
☪そっくりさん。
アラタさんの声が聞けなくなってから3日が過ぎた月曜日の朝礼。
教育実習生がわたしのクラスに来ることを知った。
なんでも教育実習生は男性らしい。
大学4年生だって。
それを知った女子たちはものすごく嬉しそうで、男子たちはとても残念そうにしていた。
まあ、引っ込み思案なわたしにかぎっては教育実習生が男性だろうと女性だろうと別に興味はわかない。
というか、そもそも教育実習生っていう存在もどうでもいい……。
どうせ相手は根暗なわたしなんて興味ないだろうから……。
だから校長先生が話す内容を『そうなんだ』っていう感じであっけらかんと聞くだけだった。
教育実習生の声を聞くまでは――……。
わたしの意見が180度ぐるりとひっくり変わったのは、そう。
朝礼が終わって教室に戻ったあと、朝のショートホームルームで彼の声を聞いてから。
「はじめまして」
そう言った彼の声は――明るく弾けているふうなのに、しっとりとした低いトーン。
その人の声は、わたしの救世主。
アラタさんの声に似ていた。
しかも。
彼の名前は井上 新(イノウエ アラタ)。
臨時パーソナリティーをしていたアラタさんと同じ『アラタ』なの。
びっくりして顔を上げたら、ものすごくカッコいい人だった。
背が高くてすらっとした体型で、どこかのモデルさんみたいに整った顔立ち。
遠くから見てもまつ毛が長いっていうことだってわかる。