その男、イケメンですので。
"星野さんに、生徒会の一員になって欲しいんだ"

たった今言われたばかりの言葉を、頭のなかで何度も繰り返す。

「………えっ」

開いた口が塞がらないって、きっとこういうことなんだろうなって。
心のなかでのんきに考えてみたりして。

「生徒会の一員って…私が!?」
「うん」

爽やかな王子様スマイル。
このイケメンくんはきっとこの笑顔で、たくさんの女の子を自分に夢中にさせてきたんだろうなぁ…なんてね。

「どう?やってみる気は、ない?」

イケメンくんが微笑むと、

「生徒会、めちゃくちゃ楽しいよーっ」

可愛い彼が横から口を挟む。

「………っ、」

生徒会。
興味がないわけじゃない。
やりたくないわけでもない。
だけど、やっぱり。

「……私、普通の女子高生なんです」
「え、うん、知ってるよ?」
「特技といえば、どこでも眠れることくらいで」
「ははは、面白いねその特技」
「真面目に聞いてくださいっ」

ごめんごめん、そんな何気ない謝り方すら爽やか。
イケメンだし、しっかりしてそうだし、なんだかキラキラ輝いて見えて。

「私みたいな普通の女の子と皆さんは、絶対に不釣り合いだと思うんです」

私とは、別世界の人達なんだ。

「だから…ごめんなさい」

私には出来ないです。
付け足しながら頭を深々と下げると、

「やっぱり頭が悪いみたいだねー」

可愛い彼がまた毒舌っぷりを発揮。

「釣り合いとかさ、僕らはそんなのどうでもいいの!」
「えっ」
「正直に言うと、星野ちゃんが普通の女の子だったからこそ、星野ちゃんを選んだわけだから」
「……え」

どういうことですか?
言葉にする前に理解してくれたのか、可愛い彼は続ける。

「生徒会のメンバーだった子がひとり転校しちゃってね、足りなくなっちゃったんだ」
「転校…?」
「うん。だからメンバーを募集してたんだけど、男目当てで入りたがる女子が絶えなくてね」

『ほら、僕らって普通よりちょっとカッコいいから』

ふざけたように笑う可愛い彼の、自信は一体どこから沸くのか。

「生徒会は学校のリーダー的存在だから、そういう生半可な気持ちで入ってほしくないんだ」
「…ですよね」
「だから僕らは、責任感が強そうで、あんまり男に免疫が無さそうな子を探した。そして見つけたのが、星野ちゃん」

話し疲れて喉が渇いたのか、可愛い彼は近くにあったお茶のペットボトルを掴み中身を飲み干す。
すると、今度はイケメンくんの瞳が私を捉えた。

「星野さんを見つけたとき、適任だって思ったよ。生徒会の仕事もしっかりやってくれそうだし、男目当てとか、そういうことは考えて無さそうだったから」
「だから、ぜひ星野ちゃんに生徒会に入って欲しいんだっ」

続けて可愛い彼が更に可愛らしく笑って、じっと私を見つめる。

「アタシも大賛成だ」
「俺も!」
「ね?入るよね、星野ちゃん」

そんな、全員から願うような視線を向けられちゃったらさ。

「…まだわからないことだらけですけど、よろしくお願いします」

頷くしかないんです。
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