遠くへ行く君、見送る私
縞模様のマフラーをした誠二の鼻が寒さで少し赤くなっている。手だって手袋をしていないからひどく冷たいだろう。
いつもいっていた。
冷たいなら手袋を買いなよって。
そんなときにか限って「金ないからお前の少し貸せよ」とよくわからないことをいって、私から手袋を奪っていたこともあった。
―――それも、もう。
卒業式は終わったが、私にはまだ実感がなかった。実感がわくようになるのはきっと、四月にある入学式のときだろう。
私は誠二に「そっか」としかいえなかった。
誠二と私がいったいどんな関係か、といわれたら困る。
私と誠二の間には、そう何かを期待して質問してくる子らの期待通りのものなんかなくて、あるのは友情、といえるようなものだけだろう。
そう、友情。
ゲームしたり、ジュースおごるおごらないのじゃんけんをしたり、愚痴をこぼしたり、「数学なんてわからん!」といってみたりするような――――友人。誠二だってそうだったはず。
誠二とわかれ、家に戻って一人悶々としてしまう。
あいつは、馬鹿だ。
付き合いが親しい人とそうでない人と、彼の態度は少し違う。とくに女子は。それがなんだか複雑だった。
一年生のときはよかった。進路云々の話が出始めた二年生から、私は少し変わってしまった。
別に付き合っているわけじゃないのに、誠二がほかの女子と楽しそうにしているのを見るともやもやして。一人そんな馬鹿なと思った。馬鹿。本当に。
気づかなかったよかったと思った。気づかなかったら、私は友人として三年間ずっと誠二とふざけあって、いつか同窓会なんかで再会して、「あのときは馬鹿やってたよな」と話しているだろうに。まっさらなときの気持ちのままで。
このままで、いいのだろうか。
私は段ボールだらけの部屋でひとり、そう思う。
* * *