遠くへ行く君、見送る私
――――日曜日の朝早く。
白い息をはきながら、軽装の誠二といた。
無人駅の待合室の、色の少しはげた椅子の二つを私と誠二とで埋めていた。他は誰もいない。二人っきりだ。
「わざわざ見送りに来なくてもよかったのに。寒いだろうが」
「とかいって、本当は来てほしかったんじゃないの」
「さーなあ。というかお前よくこんな時間に起きれたな」
「バス通学してた時は五時過ぎに起きてたからねえ」
私はバス通学をしていたから、電車とは縁がない。誠二は自転車て高校に通っていた。電車を利用している人は、やはり少ない。
待合室とはいえ、暖房が入っているわけじゃない。
白い息がうっすら見えるほどだ。北国の三月はまだ、冬だ。
「誠二も大学デビューするの?」
「なんだよそれ」
「ほら、みんな髪染めたりするじゃない。ピアスあけたりとか」
「しねえよ。逆に田舎丸出しだろうが」
どうだろう、と笑う私に「お前は変わらなさそうだな」という。「田舎丸出しっていう感じで」と。
失礼ね、というが多分そうだ。都会といっても私が通う大学は都心ではない。どちらかというと町、という感じである。誠二がいく都心にくらべたら田舎であろうことはわかる。
しかしこんな場所から進学するならどこだって都会だ。都会、その響きはなんとなく何でも受け入れるようで、実はそうじゃないような気がした。だから、怖い。
「そんな急に変われないよ、私は。都会が好きっていう訳じゃないし」
「それでいいんじゃね。変に変わると次会ったとき、お前誰だよってなるしな」
ちらり、と腕時計をみる。
電車がくるのはあと少しと迫ってくる。秒針が終わりへ近づいているよといっているようで腹立つ。そして、普段とさほど変わらない誠二も、だ。