憧れのコンプレックス
episode 5  ~3人の本音~










「か、かっしー!孝ちゃん?」
教室の扉を開けるとそこには親友2人がいた


「悪い。聞くつもりはなかったが、聞こえてしまった」目を合わせてくれないかっしー

「芯…今のほんとか?」こんな真剣な顔の孝ちゃん見たことない



「は、はは。好きな子だけやなくて、親友にも知られるなんてな。…でもいい機会かも。2人にも隠したくなかったし」
「「…………………」」

幻滅したかもしれへん、こんな俺に



「場所移動するか」かっしーがそう言って
俺らは屋上に移動した



「あれがお前の本音なら、俺たちも本音を言わなければいけないな」
「?かっしー?」

「芯は確かに勉強も平凡、運動神経も並。いつもヘラヘラして、くだらないことばっかり。おまけに周りを巻き込むトラブルメーカー」

「…そやなぁ」その通りや


「…だけど、お前がトラブルメーカーってことは、お前が中心になってるってことだよ」かっしーがやんわりとした口調になる


「あぁそーだろーな。お前の周りに人が集まるだろ?自然に。誰に対しても平等で、笑顔で、人を楽しませて。 お前嫌いなやつとかいねーと思うし」

「正直俺は驚愕している。お前がそんなに自分に自信がなかったことに。俺と孝は確かに自分に対して揺るぎない自信がある。でもみんなが羨むものを持ってるやつが自信がないとか、俺はそんな風に思えるお前の謙虚さや鈍感さがうらやましい。俺、どっかで芯にはかなわないなって思ってたよ」
「俺だって!みんなの中心で笑ってるてめーをどんなにすげーと思ったか!」

「………っ」2人ともそんな風に俺を見てくれてたんか



「それなのに…なんなんだよお前劣等感って!そんな気持ちで俺らと付き合ってたのか!?」
襟首をつかまれる

「や、違う!俺は…!」

そんな必死な辛そうな顔で見んといてくれや

「2人とおって自分情けない思たのは事実や!でも…でもそれ以上に俺2人が大事で…遠慮はしてへん!無理して付きおうとったわけやない!それだけはわかってくれ!!!」

「んなこたーわかってるよ!」
バッと襟首を離される

「芯が思ってる以上に俺らはお前のことわかってんだかんな!」




「周りに気遣いすぎて自分の言いたいこと言わねーし、辛いときも無理やり笑ってっし」
「…!!」
「俺たちが気づかないとでも思ったか?お前がただのバカで明るいやつだと?バカみたいに繊細なやつなのにな」

「それくらい俺らはお前を見てるっつーこと」
「男の友情なめるなよ、芯」


…こんなに自分のことをわかってくれる親友がいる
認めてくれる親友がいる

俺は自分ばっかり見ていた
なんて俺はバカなんや
じわりと目頭が熱くなる

「うぅ~かっしー考ちゃん大好きやー!!!!」俺は2人に思いっきり抱きついた

((この素直さが十分武器だ…))



「なんだよこれ告白?」くっと笑う孝ちゃん
「愛の告白ならぬ友情の告白だな…」かっしーも満足そうで


俺ほんま幸せや、こんな親友にめぐまれて
ライバルがこの2人で


♪~♫~♪~♪
17時のチャイムが鳴る

タイムリミット
約束の時間


ぶぶぶ、と後ろポケットで俺のケータイが震える
「!!」
さやちゃんからのメール


「ホラみろ、バーーーーカ!」
「…早く行けよ」
2人は俺に背を向ける

辛いんやろうな、当たり前や


でも次の瞬間には振り返って
「幸せにしろよ!泣かせたらシメるからな!」
「ちょっとでも不安にさせたら葉山をいただく」
2人は笑顔だった


やっぱり2人はすごいと思った
そしてその優しさが嬉しすぎて
もう目に溜まった涙がこぼれそうだった



「おうっ!」俺は涙を見られないように背を向けて走り出した


待っていてくれている、さやちゃんの元に
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