桜まち
偶然は運命?
―――― 偶然は運命? ――――
今日も電車は、満員御礼。
押し合い圧し合いされながらも乗り込んだ私は、何とか自分の場所を確保してほっと一息つく。
目の前に座っているサラリーマンは、どの駅で降りるだろう。
今日は座れるだろうか?
つり革に掴まりながら思い、ふと隣へ視線をやって息を呑んだ。
なっ、何でっ?
思わずガン見したままで呼吸が止まる。
だって、隣に立っていたのは、あのスマートで白い歯がキラリンと光っている落とし主の彼だったのだ。
どっ、どうしよう。
視線をさりげなく前に戻し、ドキドキ言う心臓に鼻息が荒くなる。
櫂君曰く、私の一目惚れ様ではないですか。
どうしよう、どうしよう。
櫂君、一目惚れ様が隣にいますよ。
私、どうしたらいいの!?
半ばパニックになって、ここに居ない櫂君へ助けを求めてしまいたくなる。
でも、今私はここに一人。
おかげで頭の中では、“どうしよう”がグルグルするのだけれど、ただ電車に揺られて会社を目指しているのだから、どうもこうもない。
いつも通りにしていればいいのだけれど、興奮している感情を抑えきれずに、何度もチラ見してしまう。
見たい欲望を抑えられないんだよぉ。