桜まち
波乱
―――― 波乱 ――――
身の入らない一日がやっと終わり、みんなそそくさと会場のある六本木へと足を向け始める。
「うちらも行こうか」
櫂君に声をかけると、何故か誇らしい顔つきですっくと立つと私の隣にスイッと並んだ。
「はい。菜穂子さん、行きましょうか」
何が彼をそうさせているのか解らないけれど、やたらと気張った様子で隣を歩く。
どこぞの男前軍団かと思わせるほどのりりしい顔つきで、まるで私をエスコートするかのごとく歩き出す櫂君。
「櫂君。なんか、今日は変だね? 大丈夫?」
「それは、菜穂子さんのせいですよ」
余りに男前の顔つきで言われると、からかわれているようにしか感じないのは何故だろう。
てか、私のせいって何よ。
このヘアスタイルは失敗だってこと?
それとも、こんなヒールの高い靴を無理に履くなってことかな?
疑問に感じ朝から挙動不審な櫂君の顔を覗き込むと、満面の笑顔を返されて思わず顔を背けてしまった。
あの笑顔を見続けたら、何かとんでもないことになりそうな気がしたんだ。
それにしても、イメチェンは失敗だっただろうか。
けど、望月さんには似合ってるって言われたよ。
それに、綺麗だって。
むふふふふ。
あぁ、思い出しただけで顔がにやけてしまう。