桜まち
ぷらぷらと並んでいる料理を見て歩き、早く始まらないかなぁ、と腕時計に目をやるとようやく開始するようで、会場のざわつきが治まりだした。
見ると前方の舞台に社長が現れ、大きな拍手が起こる。
社長はとっても気分がよさそうな顔つきで、皆さん大いに楽しんで下さい。的なことを長々としゃべったあと、パーティーが始まった。
早速アルコールの入ったグラスを手に摂り、適当に後ろの方の空いていた席へと着く。
「あれ? 川原?」
空いていた席の隣に座っていたのは、たまに営業会議の席にいる同期の佐藤君だった。
「あ、どうも」
「ヘアスタイル変えたんだ。感じが変わってて、気づかなかったよ。へぇー、綺麗になったじゃん」
「そりゃ、どうも」
佐藤君の社交辞令に適当な返事をしてグラスに口をつける。
うん。
ビールが美味い。
口元についた泡をテーブルに置いてあったお絞りでおさえていると、佐藤君がビール片手に話しかけてきた。
会社の経費と思ってか、佐藤君はまだ始まってそれほど経ってもいないのに、すでに何杯も飲んでいるようで顔が赤らんでいる。
もしかして、始まる前から飲んでいたのかな?
それなら私も、開始を待たずに飲んじゃえばよかったよ。
佐藤君と勝負する気なんてないけれど、どうせ経費だし。
と私も次々にアルコールを消費していった。
そんな私の横で、佐藤君も更に飲んでいく。
そのうちに、佐藤君がちょっと軽口を叩き始めた。