桜まち 


「なにやってるんですかっ」

ちょっと怒った口調の櫂君が私を叱る。

「なにって。別に」
「酔っ払いなんて、ちゃんとかわしてくださいよ。肩なんか抱かれちゃって」
「そんな事言ったって、佐藤君が強引なんだもん。力だって強いし」

急に現れて助けてくれたことには感謝するけど、何で叱られなくちゃいけないのよぉ。

私は不貞腐れて席を立ち、高いヒールを何とか操りながらアルコールを取りにいく。
すると櫂君もその後をついて来た。

「強引だったら、なんでもされるがままですか?」
「なによそれ。そんなわけないじゃん。櫂君こそ。女の子たちの相手はもうしなくていいの?」

なんだか嫌味っぽい言い方になってしまったな、と少し思っても口が止まらない。

「きゃあ、きゃあ、騒がれて。満更でもなさそうだったじゃない」
「満更って……。そんなことないですよっ」

「こんなところに来てないで、女の子たちに囲まれた楽しいパーティーの時間を過ごしたらいいじゃない」
「なんですか、それっ」

今度は櫂君が怒って不貞腐れる。

私は、アルコールの置かれたテーブルから赤ワインのグラスを手に取り、なんだかよく解らないけれどおなかの真ん中辺りがモヤモヤしてきて、その場で一気飲みした。
続けて、グラスを手にしてもう一杯。
二杯を一気に飲み干すと、さすがに胃の中がカァーッと熱くなる。

「ちょっ、菜穂子さん。そんな飲み方しないで下さい」
「櫂君には関係ないでしょ。早く女の子の相手してきなさいよ」
「ですからっ」

不満顔を向ける櫂君からぷいっと顔をそらし、ワインのグラスを二つ手にしてさっきの席へと戻ると丁度ビンゴ大会が始まった。


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