桜まち
冬に夏の約束
―――― 冬に夏の約束 ――――
気がつくと、廊下のソファで転寝してしまっていた私の体には、櫂君のコートが掛けられていた。
そして、当の櫂君は、直ぐ隣のソファでスマホを見ている。
ゲームでもしているのかな?
「櫂君?」
声をかけると、こっちを見て優しく笑う。
「大丈夫ですか?」
「うん。ねぇ、私、どのくらい寝てた?」
もしかして、パーティーはお開きになってしまったかな?
私の呟きにスマホの時刻を確認した櫂君が、大丈夫ですよ。といって立ち上がる。
「菜穂子さんが寝ていたのは、ほんの十五分程度です」
「あ、なんだ。そんなもんなんだ」
うっかり翌朝、なんてことになっていてもおかしくないくらいの深い眠りだったな。
「よく寝たー」
うーっと伸びをして呟くと、櫂君が笑う。
その笑い顔にとても安心している自分がいた。
櫂君は、怒っているよりもやっぱり笑ってくれているほうがいい。
「会場に戻りましょうか」
「うん」
頭も体もすっきりして、櫂君と二人で会場に戻ると、ビンゴが盛大な盛り上がりを見せていた。
舞台の方を注目すると、残された景品ボードが目に入る。
「一等が最後に残っているみたいですね」
「なるほど。それでこの盛り上がりなんだ」
納得して、さっき座っていた後ろの席に戻ると、テーブルの上に置かれていたビンゴを同じテーブルの人が変わりにやってくれていた。
なんとも気の利くお人だ。
どこの課の人だろう?
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて私が受け取ったビンゴカードは、あと一つで揃いそうな状態になっている。
「ねぇ、見て。次に四が来たらビンゴだよ」
「あ、ホントだ。一等の景品、GETできそうじゃないですか。そしたら、念願の参加賞からの脱却になりますよ」
喜ばれているのか、からかわれているのか微妙なところだけれど、社長の引く番号に注意が惹かれる。