桜まち
「なんだい。まだ寝てるのかい? 休みだからって、ダラダラしていたらお嫁にいけないよ」
「お嫁にいけそうになったら早起きするよ」
「ああ言えば、こう言う」
更に呆れかえるお祖母ちゃんに、用事は何かを訊ねた。
「空き物件を探していたんだろ? 少し駅から離れてしまうけど、年明けに空く予定の物が一つ出たよ」
「えっ、本当。それはよかった。じゃあ、それキープしておいてよ」
「余り長いこと保留にはできないからね」
「ありがと」
早速、櫂君へ連絡してあげよ。
ぬくぬくと潜っていた布団からパッと起き上がり、LINEの画面を開いたら頭がクラクラッときた。
「あれれ? まだ二日酔いの続きかな?」
焦点が定まらずに、またそのままベッドに倒れこむ。
「そうか。朝から何にも食べてないからだ」
お腹が空きすぎて目を回すなんて、櫂君に話したら笑われそうなネタだよね。
何か食べなきゃいけないけど、布団から出たくないなぁ。
お祖母ちゃんに叱られても、ダラダラからはなかなか抜け出せない。
スマホの時間を見てみたら、もう少しで一二時だった。
布団に潜ったまま、取り敢えずLINEで櫂君に物件のことを伝えると、詳しく訊きたいから今からこっちへ来るらしい。
「私と違って、元気だなー。フットワークの軽さが違うよね。若さか? いやいや、そこに触れてはいけない」
ブツブツと独り言を呟きながら、せっかくなので何か美味しい食料を持参するようお願いした。
「櫂君が来るまで、もう少し寝てよっと」
櫂君が美味しい食べ物を持ってくるのを期待して、私はまたウトウトとしてしまう。