桜まち
空腹の胃にビールを煽ると、一気にアルコールが体中を巡っていった。
「ひゃあ~っ。きくぅーーー」
ビールのCMなみに旨さを表現してから、惣菜を口にする。
「うまっ」
パクパクとリズムよく惣菜を食べ、ビールを飲むとめちゃくちゃ幸せを感じた。
美味しく食べられるって、本当に幸せ。
むふむふ言いながら口にしていったのだけりれど、思いのほか量を食べられずに残してしまった。
私としたことが、こんなんでもやっぱり病み上がりってことか。
風邪に負けたとは思いたくないけれど、納得せざるを得ない。
それから、薬を飲んで歯を磨き、再び布団にもぐりこんで少しウトウトとしかけた頃、またインターホンが鳴った。
もぞもぞと布団の中で蠢いて、出るのが面倒だなぁ。なんて思っていると控え目だけれどドアを直接ノックされる。
「望月だけど」
その言葉にガバリと起き上がる。
「望月さん!?」
さっきと同じように慌てて、またマスクをしてパジャマの上に羽織ものを着る。
同じようにドアを少し開けて顔を覗かせると、望月さんが無造作に袋を差し出してきた。
「具合が悪いのに、何度も悪いな。これ、見舞い」
「あ、ありがとうございます」
マスクの上からモゴモゴしゃべり、袋を受け取ると、中にはみかんが入っていた。
「いや、礼はいいよ。その風邪、夜中に俺がラーメンに連れ出したせいだろ?」
「え……」
「悪かったな」
「いや、そんな。違います。気にしないで下さい」
私は、ブンブンと首を振って否定をした。