桜まち 
溜息の原因






  ―――― 溜息の原因 ――――




週明け。
すっかり体調も良くなり、私は元気に会社へと出勤した。
きっと、櫂君の手厚い介護(看護)と望月さんがくれたみかんのおかげだと思う。

「おっはよー」

既に出社していた櫂君へ元気に挨拶をすると、安心したようににこりと笑顔をみせた。

「良くなったみたいですね」
「うん。もう、櫂君様様ですよ。ありがとね」

「どういたしまして」
「櫂君が色々とお世話してくれたおかげで、私は孤独死せずに済んだよ」

「そんな、大袈裟な」

櫂君はケタケタと笑いながら、コーヒー飲みますか? なんて、相変わらず気の利いたことを言って設置されたドリップサーバーからコーヒーを淹れて持ってきてくれた。

「ありがと。櫂君て、本当、男にしておくにはもったいないよね。やっぱさ、お嫁にいった方がいいよ。うん」
「じゃあ、菜穂子さんが貰ってくださいよ」
「えー? 私? そうね。考えておくよ」

笑いながらそんな話をしていると、部長からまた議事録を頼まれた。

「午後一の会議だから、忘れるなよ」

念押しされて、はーい。なんて間延びした返事をしてから熱々のコーヒーを口に含み、PC画面を見ながら昨日のことを櫂君に報告した。

「聞いてよ、櫂君。昨日ね、望月さんも来てくれたんだよ」
「えっ?!」

「ラーメンのお誘いに来てくれたみたいなんだけど、私が風邪だってわかったら、みかんくれたの。風邪にはビタミンだよねぇ。そういえば、今朝は駅で逢わなかったなぁ。残念」

私が早口で浮かれながら話していると、目の前の櫂君が沈んだ声を出した。


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