桜まち
「また……望月さんですか……」
どうしたんだろう? と思いながらも、浮かれポンチな私は話の続きを聞いて欲しくてたまらない。
「あっ。そうそう。大事なこと忘れてた。それで、その時に何かあったらいつでも連絡してって。番号とか教えてもらっちゃったの」
私は、嬉しさにウキウキしながら櫂君へと報告する。
「そしたらさ、早速メールが来て」
私はスマホを取り出し、昨日届いたメールの画面を櫂君へと見せる。
「でね。これって、どういう意味かな? 櫂君解る?」
スクロールした最後の一文を見せて首を捻ると、櫂君がぼそりと呟いた。
「どうでもいいですよ……」
「え?」
「話題……変えてください」
「櫂君?」
画面を櫂君に差し出すように見せたまま、私は更に首を捻った。
どういうこと?
メールの話はつまらないからしないでってこと?
それとも、望月さんとの話がつまらないってこと?
「ねぇ、櫂君――――」
私が櫂君に疑問を訊ねようと口にしたところで、櫂君のそばに女性社員が現れた。
「藤本君」
かけられた声に首をめぐらせると、クリスマスパーティーの時に甘い声で櫂君のそばに擦り寄っていたピンクのフレアスカートヒラヒラちゃんが立って居た。
今日は、ベージュのスーツでしっとり大人に決めている。
「あ、佐々木さん」
へぇ、この子佐々木さんて言うのね。
佐々木さんは、櫂君だけに視線を注いでにこやかな笑顔を向けている。
いや、媚びるような笑顔といった方がいいかな。
要するに、私の事は眼中になし、とでも言ったところでしょう。
なんなら、目障りだからあっちに行ってて、てなくらいの雰囲気を醸し出しているのです。