桜まち
「だいたい、櫂君も櫂君よ。黙って連れて行かれちゃうって何? もっとちゃんと断ればいいじゃん。私には酔っ払いの相手なんて、ちゃんとかわしてください、なんて言ってたのに。櫂君なんて、酔っ払ってもいない女の子をかわせてないじゃん」
あー、イライラするっ。
クリスマスパーティーの時のように、お腹の中がモヤモヤしてきた。
これは、あのヒラヒラちゃんこと佐々木さんのせいよね。
彼女が私を目の敵のようにしてくるから、むしょうにイライラしちゃうんだ。
佐々木さんの態度にイライラしながらも、櫂君の分の仕事も片付けなきゃと、私はせっせと仕事に励んだ。
それから一時間経っても、二時間経っても、櫂君は戻ってこなかった。
「もう、お昼じゃん」
PC画面の時計を見て、ぶつくさ零す。
調子の悪いPCを直すのに、何時間かかるわけ?
新しいの買って貰った方がはやいんじゃないの?
嫌味臭く思っていると、部長がそばに来た。
「午後一の会議。遅れるなよ」
ああ、そうだった。
午後からは、議事録頼まれてたんだっけ。
すっかり忘れていたよ。
それもこれも、あのヒラヒラちゃんのせいだわ。
気がつけば、何もかもを佐々木さんのせいにしている私の表情を今激写されたら、鬼の形相といわれるかもしれない。
イライラしている自分を俯瞰してみて、諦めの溜息をついた。
「いつまでも戻ってこない櫂君なんて放って置いて、サッサと食事して会議室に向かわなきゃ」
財布を片手に席を立ち、一人でランチへ向かう。