桜まち 


「それに、櫂君て――――」

私が続けて話そうとすると、望月さんが話を遮った。

「さっきから、その櫂君の話ばっかりだね」
「え? そうですか?」
「自棄酒は、その櫂君が一番の原因かな?」

櫂君が一番の原因?
そうなのかな?

佐々木さんや佐藤君のことでもモヤモヤ、イライラしていると思うんだけど。

「次のボトル、開ける?」

訊かれてさっきまで飲んでいたボトルを見てみると、既に空になっていた。

「あ、もう空だったんですね」

我ながら、ペースの速さに驚いてしまった。

「どうする? 開ける?」
「はい。開けましょう。今日は、自棄酒って決めてるんで」

「明日、平日だけど」
「いいんです。朝起きてみて無理だったら、お休みします」

「マジで?」

私の答に潔いいねぇ、クククッと声を上げる望月さんは、じゃあ、とことん付き合うよ。といったあとに、ポンッといい音をさせてワインのコルクを抜いた。


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