桜まち
嘘でしょ?!
―――― 嘘でしょ?! ――――
気がつけば、四本目のワインへと突入していたのだけれど、私の意識はかなりしっかりとしていた。
こんなに飲みまくっているのに、そのわりには思いのほか酔わないのはどうしてだろう?
クリスマスの時なんて、もっとヘロヘロになったのにな。
そう考えてみて、ある答にいきついた。
それは、一緒に飲んでいる相手が望月さんだからだと。
きっと大好きな望月さんを前に、自分でも気がつかないうちに緊張して気が張っているんだろう。
これが櫂君だったら、私は既に一本目を飲み干したところで、ヘロヘロどころか、ゲロゲロになっていた気さえする。
一目惚れだった望月さんと、この部屋で二人きりでお酒というシチュエーションに興奮しているんじゃないだろうか。
だから、こんなに飲んでもヘロヘロにならないんだ。
「ぼんやりして。大丈夫か?」
酔わない理由を考え込んでいたら、望月さんの心配そうで男前の顔が近くにあった。
さっきまで、小さなテーブルを挟んで座っていた私たちだけれど。
飲んでいる間に話が盛り上がり、気がつけば、隣同士という距離になっていた。
「あ、大丈夫です」
「それにしても、やっぱり酒豪だね。川原さんは」
ワインのグラスを空にした望月さんが、胡坐をかいた姿勢でふぅっ、と小さく息を零した。
私も結構飲んだけれど、望月さんもかなり飲んでいる。
私の心配なんかしているけれど、望月さんこそ大丈夫だろうか。
「望月さんは、大丈夫ですか?」
「俺は平気。けど、女の子でこんなに飲む子がいるなんて、ある意味感動だな」
「なんですか、それ」
私はクスクスと笑い、酔わない理由を告げた。
「きっと、望月さんが一緒だからですよ」
「ん? それ、どういう意味?」
「なんて言うか、緊張しているんだと思います」
「え? 緊張? 俺に? なんで?」
「だって、望月さんは私の一目惚れした人なんですから」
こぶしを握って訴えると、苦笑いを零された。