桜まち
鍋に火をかけてうどんの準備をしながら、こっそりキッチンから望月さんの様子をみてみた。
彼は、すっかりこの部屋でくつろいでいて。
その姿を見れば、まるで同棲相手でもあるかのようだ。
望月さんと同棲なんて、きっと毎日がとっても楽しいだろうなぁ。
ラブラブでイチャイチャで、むふふふ。
勝手によからぬ想像をしてみたりする。
ニヤニヤしながらうどんを作っていると、喉の渇きを覚えてミ冷蔵庫からネラルウォーターを出し、ゴクゴクと流し込んだ。
は~っ、おいし。
そこへ望月さんもやってきた。
「あ、それ。俺にも頂戴」
半分ほど残っていたペットボトルを私の手からとると、そのまま口をつけて一気に飲み干してしまった。
間接キスだ、へへ。
「さすがに俺も飲みすぎたかもしれない」
ふぅーっと長い息を漏らして私を見る。
「望月さんも、お酒強いですよね」
「んー。まぁ、弱くはないかな。大学の頃は、先輩たちに浴びるほど飲まされまくってたから、結構鍛えられてんのかも。それに、仕事の付き合いもあって、飲みの席も多いから、自然と強くもなるよ」
なるほど。
男の人も、何かとお付き合いの場で大変な思いをしているのね。
キッチンで話し込んでいるうちに、うどんが煮えた。
「さ、できましたよ。食べましょうか」
器を用意してとりわけ、仲良く並んで座りうどんを頬張る。
幸せを絵に描いたような光景に、自然と目じりが下がっていく。