桜まち
「驚きすぎ」
「え……あ。だって……」
「イヤだった?」
イヤ?
そんなわけない……。
大好きな人にキスされて、嫌なはずがない。
だけど、なんだろう。
何かが違う……。
よく解らないけれど、イヤじゃないけれど……。
望月さんを見たままいまだ動けずにいると、もう一度顔が近づいてきた。
瞬間、どうしてなのか私は顔を背けてしまった。
「あ……、ごめんな……さい……」
私の行動に、望月さんは戸惑いを見せる。
当然かもしれない。
あんなに好きだの一目惚れだの言っておきながら、キスを避けるなんておかしいよね。
だけど、なにかが自分の中でブレーキをかけるんだ。
それが何なのかは解らないけれど、これ以上進んじゃいけない気がした。
「いや。いいよ。俺も、突然すぎたし」
望月さんが少し寂しそうな顔をした。
どうして私は、キスを拒んだんだろう……。