桜まち
そんな櫂君は、ボリューム満点の自分のオムライスと三分の一ほど残してしまった私のオムライスをしっかりと完食してくれた。
もちろん、天辺にデデーンと乗っかっていたウインナーもしっかりとだ。
「ねぇ。大丈夫?」
少し苦しそうな顔をして店を出た櫂君が心配で、ちょっと休憩がてらにコーヒーでも飲む? なんて誘ったら、これ以上何もお腹に入れさせないでくださいと笑われた。
確かに。
午後からは、食べ過ぎた分を消費するみたいに、櫂君はバリバリと仕事をこなしていった。
彼は、いつか本当に出世していくんじゃないだろうか?
こんなよく解らない雑用部署には、そう長くいないかもしれないなぁ。
櫂君が花形の営業とか開発に移動したら、あの生産性のない会議もなくなるかもしれないな。
今のうちに媚を売るか?
ニヤニヤとした顔で出世頭を見ていると、櫂君が下心アリアリの私の視線に気づいて手を止めた。
「なんですか?」
僅かに訝しんだ顔が、よからぬことを想像しているだろうといっているように見える。
だとしたら、なかなかに鋭い。
「なんでもないでーす」
前に向き直って仕事にかかると、櫂君は首を傾げて不思議そうにしていた。