桜まち 


その後、美味しいと評判のラーメン屋さんへ櫂君を連れていった。

「ランチにラーメン選ぶって。菜穂子さんらしいですよね」
「え? なにそれ。なんか、馬鹿にしてる?」

「いえいえ。気を遣わなくて楽なので、いいです」
「褒められているような、いないような」

「あんまり深く考えないでください」
「それって、褒められてないってことじゃないの?」

しらーっとした目で見ると、ススーッと目を逸らされた。

まぁ、いい。
大らかなのが私のいいところだから。

「ここの塩ラーメン。美味しいんだよ」
「じゃあ、菜穂子さんお勧めの塩味にします」
「従順でよろしい」

満足気な顔をする私を見て櫂君が笑っている。
なんとも爽やかな笑顔だ。
会社の子達は、こんな笑顔にやられてしまうのだろう。

私が勧めたラーメンをかなり気にいってくれた櫂君は、替え玉をした。

「細いのに、よく食べるよね」

感心しながら櫂君の食べっぷりを見ていると、あっという間に替え玉もぺろりと平らげる。
スープまでしっかり完食した櫂君は、あとひと玉くらいいけそうな気がする、なんて驚きのセリフつきだった。

その細い体の何処にラーメンが収まってしまったんだ。
マジマジと見てみたけれど、相変わらずシュッとしたスマートさ。
お腹の辺りも出ていなくて、本当にラーメンが何処へ消えてしまったのか不思議になる。


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