桜まち
少し先にある主要駅へ移動し、私たちは映画を観ることにした。
真剣なのは肩が凝るから、笑えるのにしようよ。という私の提案を櫂君は快く引き受けてくれて、私たちはB級映画のくだらなさに涙を流して笑い、突込みをいれた。
「ほんっとにくだらなかったね。何、あのセリフ」
私がケラケラと笑うと、櫂君も、うんうん。と笑ってくれる。
こういう趣味も合うから、一緒に居ても楽しいんだよね。
櫂君といると、なんだか居心地がいいわ。
抱き心地のいい大きなぬいぐるみのような感じ。
「櫂君は、くま? それとも犬?」
「え? 何の話ですか?」
勝手に想像した大きなぬいぐるみを重ね合わせて、つい言葉にしてしまった。
「ううん。なんでもない」
思わず含み笑い。
「このあとどうしますか? 夜飯にしては早い時間ですよね」
「そうだねぇ。でも、飲みたいなぁ」
「いやいや。今僕、飯の話をしたんであって。酒の話は一言もしてないですけど」
「そうだっけ?」
私がとぼけると、ホント酒好きですよね、と笑っている。
「居酒屋も、この時間じゃまだ開いてないですよ」
「うーん。じゃあ、家で飲むか?」
「えっ? 家って、もしかして菜穂子さんちですか!?」
私の提案に、ひどく櫂君は驚いている。
「あのさ。とって食おうってんじゃないから、そんなに驚かないでよね」
「いや、そんな。食うだなんて……。寧ろ僕が……」
「え?」
「あっ、いえっ。なんでもないですっ」
櫂君は、慌てたように笑っていた。