桜まち
家飲み
―――― 家飲み ――――
売上協力をしようと、お祖母ちゃんが経営するコンビニへお酒を調達しに行った。
「ここも、菜穂子さんのお祖母ちゃんの持ち物なんですか。凄いですねぇ」
「元々は、お祖父ちゃんのだったんだけどね。随分前に亡くなったから」
「他にも色々持ってるんですか?」
「そうだねぇ。この町の色んなところに土地を持ってるよ。パーキングになってる所も何箇所かあるし。うちのマンションだけじゃなくて、アパートもあるし。コインランドリーなんてのもあるみたい」
「凄いですねぇ」
私の顔を感心しながら見ている櫂君だけれど、すごいのは私じゃなくてお祖父ちゃんとお祖母ちゃんだから。
「私は肖ってるだけなので」
「集りですね」
「こらこら。人聞きの悪い」
といってもマンションの家賃を払っていないのだから、強くは言えないけど。
「菜穂子さんちの実家もこの町なんですか?」
「うん。そうだね。もう両親はいないから、私とお祖母ちゃんと二人だけど」
「え……。あ、ごめんなさい。僕余計なこと訊いて」
「いいの、いいの。気にしないで」
買い込んだ大量で重いアルコールを櫂君に持たせて、私はつまみの入った軽い袋を片手に自宅マンションに戻ってきた。
お隣の引越し作業も終わったみたいで、マンション内は元々の静寂を取り戻し、朝の騒がしさは既になくなっていた。
近々クリーニング業者が入って、奇麗にリフォームを済ませれば、新しいお隣さんがやってくるだろう。