桜まち 


コソコソ嗅ぎまわるつもりは毛頭なかったのだけれど、これぞまさに運命ではないのか。
帰りの電車内で、彼と私は又も一緒になったのだ。

わっはっはー。
どうだ櫂君。
私と彼は、ぶっとい赤い糸で繋がっているぞ。

ふっ、と笑い、悦に入ってしまう。

鼻息も荒く、彼の動向を窺ってみた。

相変わらず彼はスマホにご執心のようで、二つ隣のつり革に掴まったまま画面に見入っている。

そんな彼を私はガン見。
したいところだけれど、今朝方恐がらせてしまったかもしれないことを思うと、見すぎるのはマズイよね。
私だって少しは学習するんだから。

直にガン見できないので、夜の車窓に映った彼をガン見することにしたのだ。

私ってば、賢い!

それも立派なガン見です。という櫂君の声が聞こえてきそうなのを振り払い、私は愛しの彼を観察する。

スマホで何してるんだろう?
ゲームかな?
それとも調べ物?
友達とLINE?
気になる、気になる。

そのうちに、彼は私と同じ最寄り駅で降りた。

当然よね。
落し物を拾ったくらいだから、同じ駅を利用しているに決まってるものね。

問題は、何処に住んでいるのか? って話よ。
でも、このままあとをつけて行ったら、本当にストーカーになっちゃう?
でも、知りたいっ。
アツヒロさんのお家が何処なのか、知りたいよー。



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