桜まち
誘惑に勝てなかった私は、彼の後をちょっとだけついて行くことにした。
うん。
本当にちょっとだけだよ。
駅から直ぐの商店街を歩いて行く彼。
その数メートル後ろを私もついていく。
というよりも、私の帰る道順もこっちなんだから、つけてる事にはならないよね?
いえ、立派なストーカー行為です。
という櫂君の声が頭の中を駆け抜けたけれど、無視無視。
それほど長くない商店街を抜けた先には、大通りがある。
私の家は、この通りを渡って直ぐのところにあるのだけれど、残念なことに、彼の家はこっち方向じゃないらしい。
通りを渡らずに大通りに沿っていってしまった。
追いかけたい欲求を一生懸命に抑え込み、私は離れていき見えなくなる彼の背中をいつまでも見つめていた。
アツヒロさーん。
また電車内でお逢いしましょうね~。
見えなくなった背中に私は大きく手を振った。