桜まち 
多分しません




  ―――― 多分しません ――――




出社して直ぐに、昨日のことを櫂君へ説明すると、すっぱり冷静に言い切られた。

「完璧にストーカー決定ですね」

そんな風にピシャリと私へ言った櫂君は、何故だか少し怒ったような顔をしている。

私がストーカーに認定されてしまったことを、自分のことのように置き換えて怒ってくれているのだろうか。
だとしたら、なんとも人情に厚いじゃないのさ。

「でもさ。ストーカーの事はさておき。本当に運命だと思わない? お隣さんが一目惚れの彼なんて、もう赤い糸しかないよね? ね、ね」
「そうですかね」

運命の赤い糸かもと喜んでいる私へ、櫂君はやっぱり怒ったように素っ気無い。

私の代わりにストーカー認定について怒ってくれているなんじゃないのかしら?
そうじゃないとしたら、なんだろう?

とにかく、櫂君にしては珍しくご機嫌斜めなのです。

あの日か?

って櫂君は男か。


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