桜まち
「僕、忠告したじゃないですか。何かあってからじゃ、遅いんですよ。お祖母さんにだって迷惑がかるんですからね」
櫂君にそういわれて、私は初めてそのことに気がついた。
お祖母ちゃんに迷惑……。
そっか。
私がストーカー認定になってしまえば、たった一人の身内である、それも年老いたお祖母ちゃんに迷惑がかかることになるんだよね。
赤い糸に浮き足立って、そんなことすら考えられないでいたよ。
駄目だな、私。
現実をしっかりと突きつけられて、私は考えを改めた。
それに気づかせてくれた櫂君には、感謝だよね。
「櫂君。ありがとね……」
「解ればいいんです」
うん、うん。と頷く櫂君を見ながら、私の思考は新たなことを思いつく。
「ねぇ。櫂君」
「はい。なんですか?」
「今日って、予定ある?」
「いえ、特には」
「じゃあさ。付き合ってくんない?」
顔の前でハエの如く手をすり合わせる私のお願いごとを聞くと、櫂君はがっくりと頭をたれながらも諦めたように、少しだけですからね。といってくれた。
本当に櫂君て、優しいよねぇ。