桜まち
悲しい
―――― 悲しい ――――
昨日の今日で、私はとてもがっくりと来ていた。
私にしては珍しく食欲もなく、毎日欠かさず食べていた朝食も喉を通らなかったくらいだ。
会社に着いても、来る途中にコーヒーショップで買ってきたコーヒーをエレベーターの中で一口二口お腹の中へと入れただけ。
足元をヨロヨロとさせ、悲しみに暮れながら総務二課のフロアに行くと、櫂君が既に仕事の準備を始めていた。
私はどんよりとした真っ黒な空気を背負い、櫂君に声をかけた。
「櫂君。昨日はありがとう」
「いえいえ。どういたしまして。少しは元気出ましたか?」
生き生きとした櫂君の言い方に、私は力なく首を横に振り、まだたっぷりと入っているコーヒーのカップを力なく机に置き、ドサリと椅子に座る。
「えーっと。昨日よりも、更にテンションが落ちているのは、僕の気のせいでしょうか」
櫂君がちょっと引き攣ったような顔をしている。
きっと、せっかく高級イタリアンをおごってやったのに、なんなんだよ。とお怒りなのでしょう。
当然だよね。
ホント、ごめんなさいね。
でもね、落ち込まないわけにはいかないのよ。
あんな悲しい思いをしたのに、それでも元気になんて、いくら能天気な私でも無理です。
だって、久しぶりに見ることができた好きな人から、二度と関るな。だよ。
これが落ち込まずにいられますかって。